名駅の郷愁風景

名古屋市中村区【都市部の非戦災地区】 地図
 
町並度 4 非俗化度 8  −都市高速や高層ビルに接して残る非戦災地区−









名駅五丁目の町並


 ここに紹介する町並は周囲を近代的な都市の風景に囲まれ、封じられたように戦前の姿が残る地区だ。名古屋駅から徒歩10分ほどの距離にある。名駅という町名自体名古屋駅前という意味合いが込めらたものであり、実際展開する町の風景はその地名に全く不釣合いなものに映る。
 他の大都市の例に洩れず名古屋においても第二次世界大戦時に大規模な空襲に晒され、市街地の多くが被災し町並を失った。しかし消失を免れた地区は必ずあるもので、特に堀川が自然の防火帯となって類焼を防いだことによりその西岸は比較的焼残っている。
 古い町並が残ることで有名なのは那古野・四間道地区であるが、その南に位置するこの名駅五丁目界隈もそれに十分匹敵するものがある。焼残ったという以外に抜本的な都市開発が現在まで行われなかったことで、奇跡的に戦前の姿を留めているのだろう。近年になって区画整備された我国の大都市では、大通りや幹線道路によって区分けされた多くの「島」が存在し、島の内部も中小の近代的なオフィスビルで占められる風景が展開するのだが、ここでは平屋や二階建ての木造建築、昭和を感じるアパート群などで構成され、全く手付かずの細い路地が脈絡なく巡っている。私は試しにこの界隈を車で抜けようとしてみたが、交差点など乗用車のことを考えていない旧来そのままの路地であり、切り返さなくては抜け出すことも容易でない。
 一角にはこの地方独特の屋根神様が祀られ、小路には色とりどりの草花がプランターなどに植えられ住民が水を与えている姿などが見られる。昭和の庶民生活の風景が今でも頑なに息づいているようであった。





訪問日:2008.03.23 TOP 町並INDEX