吉良の郷愁風景

愛知県吉良町<産業町> 地図  <西尾市>
町並度 3 非俗化度 8  −製塩や木綿栽培などで発達した−






吉良(吉田亥改)の町並 国道沿いと裏手の土蔵


 吉良町は三河地方の南部、矢作古川と矢崎川の下流域の低平地に位置し南は三河湾に面する。
 名鉄西尾線・蒲郡線の吉良吉田駅からはかつて碧南方面に三河線の末端が伸びていたが、現在は廃線となっている。この吉田地区が町の中心である。
 律令制下には一帯が吉良荘と呼ばれ、東条・西条という地名があった。西条は現在の西尾付近、東条が吉良町付近に相当すると考えられている。中世は吉良氏の勢力下にあったが、三河一向一揆により滅亡し、徳川氏の支配下となった。江戸期には幕府領をはじめ西尾藩領、駿河沼津藩領、旗本諸氏領などの複雑に入組むところとなっている。
 産業として筆頭に上がるのが製塩業で、江戸前期から盛んに新田開発が行われて元禄元(1688)年には一千石の新田を完成させ、良質の塩を産出した。山国信州では吉良の塩は大変貴重な物であり、ここから矢作川をさかのぼり、三州街道を経由し伊那地方へ貴重な塩をもたらした。また米作や木綿栽培も盛んになり、それらは平坂湊まで陸送されたのち江戸へ向けて舟運に委ねられた。
 矢崎川の主に右岸が古くからの町の中心で、寺院などが固まっている。ただし古い町並としてまとまっている箇所はなく、商家や土蔵などが散在しているという印象だった。そんな中にあって、国道より一本南の細路地には一階部の格子や二階部の木製欄干を持つ建物が数棟連続した個所があった。また、川の左岸堤防下には立派な敷地を持つ邸宅が数棟見られ、瓦を葺いた立派な門がある。塩田経営などで財を築いた御宅か、または豪農宅のように感じられた。




国道南側の路地




矢崎川左岸に見られる立派な門を持つ邸宅



訪問日:2024.01.04 TOP 町並INDEX