三河高浜の郷愁風景

愛知県高浜市<産業町・港町> 地図 
 
町並度 3 非俗化度 7  −西三河南部の瓦の町−




 春日町6丁目の町並 青木町7丁目の町並


 高浜市は県の南部、三河地方の西部に位置し西は細い湾を挟んで知多半島と向き合っている。名古屋鉄道三河線が知立・豊田方面とを結んでいる。
 高浜というと三州瓦というブランドともなっている瓦産業が17世紀頃から始まり、瓦の町として知られる。特に18世紀後半の天明の大火と呼ばれた江戸での大火事を契機に町家にも瓦の使用が認められ需要が急増、産業として定着した。その背景には、瓦の材料となる良質の粘土質の土壌に恵まれ、燃料にも事欠かなかったことと、後一つは港の発達である。高浜湊は三河五ヶ湊のひとつに数えられ、江戸通いの船も多かった。重い瓦は船底荷としても最適で、その上に衣浦沿岸地域の特産であった酒・酢・味醂などの醸造物を積み江戸へ向った。
 明治以降も近代産業として発達し、末頃には窯を持つ瓦屋は100軒を数えるほどだったという。
 古くからの市街地は名鉄の三河高浜駅から高浜港駅にかけての西側に開ける。名古屋まで30分余りの位置にあるが町の風景は郊外地というより一つの地方の小都市といった風情である。緩やかに起伏を繰返す町並には緩やかな時間が流れているようで、大都市近郊らしくない。
 ただ伝統的な建物は少なく古い町並というほどではない。対岸の知多半島を含めこの付近は黒板壁が目立つ家並だが、ここではその特徴はやや淡く、木質感をやや強めに感じながら古びた商店、寺院、そして廻船で財力を高めたのか塀に囲まれた敷地に入母屋の堂々たる造りを見せているものもある。
 この界隈を市は「鬼みち」と名付けて散策路としている。鬼瓦のモニュメント、歴史の深さを感じさせる寺などを巡る約5kmの手軽な道のりで、遠方からわざわざ訪ねるほどのものではないが近い方は少し立寄って見られるのもよかろう。
 




青木町8丁目の町並




青木町2丁目にある恩任寺と横の路地

訪問日:2014.11.23 TOP 町並INDEX