南大社の郷愁風景

三重県東員町<在郷町> 地図
町並度 5 非俗化度 10 −員弁川右岸の在郷町−


















南大社の町並
 


 東員町南大社は鈴鹿山脈に端を発する員弁川の中流右岸に展開し、町の主邑の一つである。
 みなみおおやしろと読み、一見門前町のような印象を抱くが、歴史的実態は在郷町である。とはいえ、江戸の初期よりここが町場として発達していたという記録はなく、長らく一零細農村として息づいていたとされる。
 中世末期に紀伊から移住した清水藤太夫重光という人物が員弁川の水を引き、水利に乏しかった土地に沃野をもたらした。現在町の中心を流れる水路はまさしくその名残であり、その水際に家並が発達していったであろうことは町を歩くと容易に想像がつくところである。
 明治に入ると、員弁郡の役所がここに置かれ、南大社にとっては最も輝かしい時期であった。洋風の外観を保つ郵便局が今でもその姿を残しているのは当時の繁栄を伝えるものの一つであり、商業的な拠点にもなっていたに違いない。
 現在、水路沿いは静かなたたずまいであるが、町を串刺しにするように南北に走る街路は細い割に諸車の通行が多い。但し通過する車ばかりでこの町は往来からは置いていかれたような風情が漂う。それだけにやや侘しさも覚えるのだが、水際の家並は風格に似たものが感じられる。それは連なる家々に裕福そうな色が感じられることによるところが大きく、中には水路を前景とした邸宅といった厳かな構えを持つものもあった。
 現代交通にあってはややわかりにくい場所にあることもあって、隠された珠玉の町並といった感も抱くところである。
 
訪問日:2012.11.04 TOP 町並INDEX