平田の郷愁風景

岐阜県平田町<商業町> 地図  <海津市>
 
町並度 5 非俗化度 10 −低湿地帯に築かれた市場町−


平田(今尾)の町並
 平田町は揖斐川と長良川に挟まれた低湿地帯にあり、古くは水害が頻発し、人々はそのたびに堤を築き洪水と格闘してきた。江戸期の或る記録では、40年間のうち水害を受けなかったのはわずか6年のみであり、ほゞ毎年村のどこかが洪水の被害にさらされる状況であった。
 また雨の少ない折には川に囲まれた地にありながら水田の用水に不足し、掘抜井戸を掘って灌漑を行う工夫がなされていた。後に洪水対策や土地の改良などによって豊かな穀倉地帯を築くに至っている。
 現在の町の中心は旧今尾村で、中世末期に市が開かれていたとの記録がある。元禄の頃には六斎市として定期的に市立てされ、その日には100戸余りもの店舗が開かれていたという。近郷の商業町として当時から発展していた歴史を持つ。
 町並は往時の商業が盛んだった頃の面影そのままに小規模な店舗が多く、抜本的な区画整理が行われていないのかやや雑然としたような昭和の面影を濃く残す町並であった。平入りの町家建築が随所に残り、裏小路を中心に古い町並を残していた。
 










 建物の外観から江戸時代に遡るものはなく、古くとも明治以降のものであろう。一階部は改装された姿が目立つが、袖壁などこの地方に特徴のある意匠が良く残されていた。一部には厳かな構えを持つ豪壮な商家が残っていることが特筆される。
 町の西側は一段土地の高い堤防が巡り、増水時に水害からこの町を守っている様子がよくわかる。その外側は潟湖があり、さらにその先に輪中集落を望むことができる。一見水郷のような風景にも映るが、まさに水との戦いの軌跡が刻まれたものであろう。

訪問日:2012.11.04 TOP 町並INDEX