串の郷愁風景

愛媛県三崎町<漁村> 地図 <伊方町>
 町並度 5 非俗化度 9 −佐田岬半島先端付近 一帯でも最も漁業が盛んだった集落−


 
 

串集落の風景 
 

 佐田岬半島の突端付近、伊予灘側に串という地区がある。刀のように細長い半島のいよいよ先端というところで、山がちな地形が平地を持たず海に没する斜面に集落が展開している。
 江戸期には三崎浦の枝浦のひとつで、一帯でも特に古くから、そして大きく漁業が発達した所だ。特に海士による鮑やサザエ、天草漁などの採取漁業が特筆され、元禄9(1696)年の藩への小物成(租税)として「串鮑千九百盃」とある。明治維新後も、半島先端付近を中心に盛んに行われ、串には缶詰工場が設立された。また、明治14年には串の漁民15名ほどが朝鮮半島方面に向い、鬱陵島で鮑漁に従事したが、これが県内初の海外出漁となった。
 崖上の傾斜地といったところに家並が展開し、急斜面というほどではないが階段や坂、石垣で克服している。石垣に用いられる石は伊予青石と呼ばれる独特の風合いのもので、この地を横断する中央構造線の南側に分布している変成岩という。そういう立体感のある集落で、立派な商家建築風の建物が見られる一角があり驚く。これは先進的な漁業で財力を持った家だったのか。入母屋の堂々とした屋根を持ち、二階正面には木製欄干も備えられていた。
 集落の中心は路地も狭く、石垣そして井戸があちこちに見られるといった風景が印象度を高める。一方周囲には鉄骨造の建物や学校もあり、宇和海側に少し外れた所には墓地の広がりがあった。半島先端に位置しながら、一通り揃っているイメージであった。



 


 
町家・商家を思わせる家々も見られる  


 


 
   


 


 
          

訪問日:2021.08.06 TOP 町並INDEX