三角浦(西港)の郷愁風景

熊本県三角町【港町】 地図
 町並度 5 非俗化度 2 −明治期の貿易港としての遺構が程度良く残る−

         
埠頭や水路・石橋など建設当時の港の遺構が残る三角西港の風景


水路沿いの景観


 現在の三角町の中心部から北に2kmほど、半島の先端に位置するところにかつての三角港がある。明治17年に外国人技師の設計に基いて着工され、土木技術の粋を集めて石積の埠頭や水路、橋梁などが建設され3年後に開港した。三国港(福井県)の突堤、野蒜築港(宮城県)とならんで日本三大築港の一つに数えられるが、その中でも旧三角港は港としての遺構が程度良く残されており、また形成された港町は現在でも洋館をはじめとした伝統的建造物となっている。それらは近代産業遺産の一つとして価値が認められ、近年世界遺産としても登録された。
 三角港は貿易港に指定され税関も設置された。背後に三池炭坑の石炭など資源や工業製品の大きな輸出需要があり、海上貿易の最前線となった。埠頭近くには旧廻船問屋の建物や海運業者の倉庫、旅館建築などが見られるほか、背後のやや小高いところには旧宇土郡役所庁舎や旧三角簡易裁判所の建物が、それぞれ洋風の外観で残っている。
 明治32年に九州鉄道(後の国鉄三角線)が建設され三角駅ができるまでが隆盛期で、以後は徐々に鉄道輸送に移行し、駅の近くに新たな港が整備され、旧港は西港と呼ばれるようになった。
 訪ねた時は大型バスで到着する団体客なども多く見られ、完全に観光地の様相であった。伝統的な洋風建築も多くは外来客を迎え入れる施設として活用されており、客の出入りが盛んだった。土木構造物も含め、港町としてのや洋風建築を中心とする建物の価値は高いものの、町並として見ると残存度の割に観光地化の度合いが大きく、その均衡が保たれているとは言い難い。
 




旧旅館の浦島屋(復元) 旧宇土郡役所庁舎




港湾地区背後部の町並

訪問日:2017.06.11 TOP 町並INDEX