御調の郷愁風景

広島県御調町【宿場町・在郷町】 地図 <尾道市>
 町並度 3 非俗化度 9  −石州街道沿いの宿場町・在郷町−








御調(市)の町並
 

 御調町は尾道市街地から北に10kmほどの小盆地に開けている。中世より世羅郡太田荘より尾道に通じる道がこの付近を通り、中間宿駅的な役割も果していたといわれる。江戸期になるとこの道沿いに石見とを結ぶ街道が整備され、正式に宿駅が設けられた。
 この石州街道は大森の銀の輸送路として活用された重要な街道で、その往来や周囲の山村からの物資を糧に在郷商業町としても発達した。市と呼ばれたこの中心集落では名のとおり年2回、春と秋に牛馬市が行われたとされ、慶応3年の記録では紺屋・大工・桶屋・瓦師・左官などの職工人の存在が記されている。
 国道184号沿いの道の駅は地元産の食料品など豊富な商品が取扱われ、多くの車が出入りし賑わっている。そこから東へ200mほどで交差する南北の道路が旧石州街道である。宿場町・在郷町に由来する旧市街地はこの交差点を中心に北は御調川を渡る常安橋を越えてしばらく続く。新しい店舗や住宅となっている中に散見される伝統的な外観の建物に歴史を感じることができる。二階の立上がりが高く、古いものでも大正から昭和戦前にかけてのものと思われる。1階部が開放的な造りになっているものが多いことから、かつては商店がひしめき賑わっていたであろうことがわかる。橋の北側にあるビジネス旅館も明治時代創業の老舗である。
 そうした中で眼を引くのが交差点の南詰付近に残る2軒の洋風建築である。一つは「市村郵便局」の文字が残る建物で、かつて付近が賑わいの中心であったことを物語っているが、現在は丸い郵便ポストに名残が見られるのみであった。一方、その近くに残る元医院の建物は町のデパートと銘打ってカフェや地域に根ざした店舗として活用されており、同じ洋風建築でも対蹠的な姿を示していた。
 





訪問日:2018.04.08 TOP 町並INDEX