三津浜の郷愁風景

松山市三津浜【港町】 地図
 町並度 6 非俗化度 6 −松山城下の外港として栄えた−

   

 三津浜(三津)は入江に縁取られた町で、運河のような対岸とは無料の渡し船で行き来できる。この船、わずか1分足らずの「航海」であり、航路が道路の一部となっているため地元の方々が足代わりに利用する。対岸のやや山がちな地形に対し低平な土地なのは、江戸後期に長崎出島を模して浅瀬を埋立て、港湾が整備されたことによる。
三津一丁目の町




 三津二丁目の町並  三津二丁目の町並 




三津二丁目の町並 三津二丁目の町並




三津一丁目の町並 住吉二丁目の町並


 
 そのような風情ある海辺の風景に抱かれ、港町は古い町並を従えてその歴史を今に伝えている。三津浜港に通じるバス通り以外はほとんどが路地で占められ、その狭い小路に不似合いな町家建築があちこちに残っている。その姿は簡素な漁家の姿ではなく、裕福な商家を想起させるものばかりであり、狭い路地と町家という一見バランスを欠いた組合せは三津浜を特徴付ける町の風景だ。
 松山城下の外港とされていたこの三津浜には町番所をはじめ藩の施設が多く置かれ、また造船も盛んに行われた。現在でも入江に沿い、小規模な造船所が幾つか見られる。雑然として鄙びた港湾風景もこの町の魅力の一つである。
 現在は入江の対岸のはるか北側、高浜に観光港が整備され、高速艇や旅客船の多くはそちらに発着するのであるが、明治末期までは松山港といえばこの三津浜を指した。そのためこの町に残る伝統的な建物は維新後の洋風建築を含んだ多彩な姿を示していて、路地裏的な展開の中で楽しさを感じることが出来る。面的な広がりを持っているのも辻を曲る度に新たな発見があるようで、面白い。
 東側に住吉二丁目付近にかけても、やや古びた商店街や繁華街、洋風建築などが展開する。伊予鉄道の港山駅からは入江の渡し船、そしてこの地区を経由し三津浜駅へ至る(またはその逆)という散策ルートも面白い。
 地元では古い建物・町並を意識されており、今回再訪時は案内板等も前回より増設され、散策される人の姿もあった。松山市街地に近い位置に手軽にレトロ感を味わえる場所として注目を集めているようだ。その人気は単に古い建物が多いだけでなく、路地、入江とその景観など情緒豊かな風景が残っているからだろう。
 中でも賑わい創出事務所と銘打った「ミツハマル」というプロジェクトは、三津浜の魅力発信とともに空家に活気を取り戻そうという町家バンクという取組を行い、地道にかつ確実に活動されているので紹介しておきたい。
 
http://www.mitsuhamaru.com/
 
 


入江の対岸とを頻繁に行き交う渡し舟

訪問日:2008.02.11
2016.08.11再取材
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※最後の画像以外は再取材時撮影

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