田野浦の郷愁風景

北九州市門司区<港町> 地図 
 町並度 4 非俗化度 8  −北前船の寄港でかつては門司を凌ぐ賑わいを示していた-










山裾の一本道に沿い展開する田野浦の町並


 観光客の訪問も多い門司港駅付近から東に3kmほど、田野浦地区は古くからの港町である。港湾部には工場群が立地する埋立地があり、集落は陸封されたような恰好となっている。
 関門海峡の東口にあたり、海上交通の要衝で古くから港町として発達した。殊に江戸中期以降、北前船の往来が盛んになると当港に立寄る船が増加し、日本海側の各地や上方との物資や人々と交流、明治に入ると10軒を超える船宿があったという。また下関に寄港した船がここで修繕を行うなど、ドックのような役割も担っていた。
 また江戸中期の宝暦期には早くも小倉藩から遊女を置くことが許可され、遊興の地としても賑わいを見せた。北前船の寄港がその賑わいに関与していたことは間違いなく、最盛期には40名もの遊女を抱える地となっていた。その繁栄は明治に入ってもしばらく続いたが、隣接する門司が国際貿易港として急速に発展、貸座敷の営業が許可されたこともあり徐々に衰退の道を歩むこととなった。
 訪ねた最初の印象は、幹線道路からも外れた静かな所というものであった。海岸部は工場群があり大型船舶なども見えるものの、そこから奥まった場所にあるのでその印象が強調されるのであろう。バス停も見えるやや広い通りの一本山手にかつてのメイン道路が伸び、家並が連なっていた。特に見応えのある伝統的建築が見られるわけではないが、格子の残る家や土蔵など、一見して歴史の古い町並であることがわかる。
 ごくわずかな地元の人を見掛けただけでひっそりとしており、かつての賑わいは偲ぶべくもなかった。立派な石の鳥居がある春日神社付近には遊女の墓があるとのことだが、訪ねた時はそれを知らず見ることはできなかった。






春日神社の鳥居

訪問日:2023.01.04 TOP 町並INDEX