備瀬の郷愁風景

沖縄県本部町【漁村】 地図
 町並度 5 非俗化度 4 −福木の生垣の規模では屈指の集落−

 

 本部町は本島北部、東シナ海に張り出した半島の先端部を占めている。この付近は近海に島が比較的多く、それらを結ぶ港が栄えていた。 
 本部港と対岸の伊江島との海峡は潮の流れが複雑で海難の多いところであったが、船舶信号の整備などによって本島屈指の港となり、鹿児島や阪神地区との貨客船が古くから多く就航し、現在でも島内で主要な港のひとつとなっている。
濃密な福木で覆われる備瀬集落




   








集落の北側は外洋に面しており厳しい環境条件だ


 
 備瀬地区は本部港の北外れ、半島の突端に位置する。東シナ海を望む平坦な砂丘地帯となっており、その地形的な条件から海からの強風を受けやすいところであった。漁村集落が古くから立地したところだが、家々を台風時の暴風や季節風から防御する必要があり、それが福木の防風林として異例の発達をみた。
 福木は耐風・耐潮性のある常緑高木で、強い台風の襲来する沖縄地方では家屋の周囲に植樹されることが多く風物詩となっている。しかしこれほどまでに発達したものはさすがに珍しく、生垣どころか福木の森といっても良いような状態となっており、その木々の海に埋もれて家々が点在しているという方が実態に合っている。
 それはこの集落の福木の樹齢が非常に高く、300年に達するものもあり大木となっていることも大きく、それだけ集落としての歴史が深いものといえよう。集落は意外にも碁盤目状の街路で区切られ、その中に平屋の赤瓦を載せた家々が散らばっている。
 近くには海洋博の跡地を利用した有名な水族館もあり、この集落も近年備瀬のフクギ並木として観光客に紹介されているという。しかし季節柄や天候が良くないこともあったのか、私が訪ねた限りでは濃厚に繁茂した緑に覆われた静かな集落といった印象であった。本土ではまず目にすることの出来ない集落風景である。



訪問日:2013.01.03 TOP 町並INDEX