村上の郷愁風景
新潟県村上市<城下町> 地図 町並度 6 非俗化度 5 −鮭で有名な越後最北端の城下町− |
小町の町並 看板建築が見られる | 庄内町の町並 |
久保多町の町並 | 寺町の町並 |
鍛冶町の町並 | 小国町の町並 |
越後平野の最北端にあるこの村上は地理的には東北地方に近い位置にあり、市域を流れる三面川は鮭の遡上で有名であり、また茶の栽培の北限ともされ、東日本と北日本の境界とも言うべき土地である。 町を歩くとあちこちに名物である塩引き鮭が吊るされている風景も見かけた。これは本来、晩秋に遡上する鮭を捕獲し、寒にさらす冬の風物詩だそうである。私の訪ねた5月連休に見られるのは、観光用に残してあるのか、または何らかの理由で長く吊るしておくのか。良くわからないがここが鮭で有名なのは村上藩が鮭の遡上する習性に全国で初めて注目したということにもよるのだろう。ここでは100種類もの鮭料理があるとも聞く。 市政が施行されている割に小さな町であるが、城下町としての町の形は古い町並の観点から見ても遺憾なくその遺構を今に留めていた。旧市街は国道が外側を迂回したため城下町時代のままの細い通りが多く、武家町・町人町・寺町など城下町特有の特徴ある姿を歩いていると感じることが出来る。 伝統的な町並は、村上駅を起点とすると北東側に、片町にかけて断続的にその姿を留める。商店街の一角に吸収されている区域も多く、途切れ途切れの印象ではあるが、町の中心である大町・小町を過ぎ、幾つかの鍵曲りを経て庄内町、久保多町と連なる辺りには古い町並が連続性を保っていた。家々は意外にも簡素な造りであり、間口も狭く大柄な商家などは残っていないが、軒を接しながら連なる家並からは、この地方としては珍しい平入りの町家で構成されていることもあって、かつての一大都市を思わせた。 ここは村上氏が慶長3(1598)年に居を構え、城下町が整備されて以来の歴史の古い町なのである。15万石を有していた最盛期には1万人の町人の他、家中や足軽などが二千軒を超えていたといわれる。町人町の残影だけでなく、市役所の近くには武家であった若林家が姿を留め公開されているし、大町・小町の大通りを挟んでは城下町特有の、寺院を計画的に一箇所に集めた寺町が、周囲とは一線を画した静謐な町並風情を醸していた。 村上市では近年、町並景観を守るべく活動を継続されているのを、訪ねてみて知った。2014年までの長期計画で、予算を組んで伝統的な町家をかつての外観に改修し、城下町時代の町の風景を取戻そうという計画である。先の寺町でも黒板壁を地元の方を中心とした地道な努力で再生され、風情ある落着いた町並景観が復旧されている。しかも、歩いていて観光客の入りそうな外向きの店舗は極僅かであり、素材が尊重されている。現代社会と旧来の姿との共存は難しい問題であるが、この取組は現段階では上手く軌道に乗っていると私は感じた。応援したい。 格別に見応えのある古い町並が連続しているわけではないが、城下町としての結構はよくその姿を留めており、保存への取組を含めその点を評価したい。 |
|
庄内町の町並 | 久保多町の町並 |
訪問日:2007.05.03 | TOP | 町並INDEX |
---|