室戸の郷愁風景

高知県室戸市【漁村地図(津呂港)地図(室津港)
 町並度 4 非俗化度 8 −室戸岬にほど近い二つの漁港−

             




室戸岬(津呂)漁港 町に対して港が低い位置にある



津呂の町並
 

 
室戸岬は遠い場所で、高知市からも徳島方面からも延々と国道55号線を辿らなくてはならない。太平洋に槍のように突出した地形の室戸岬は黒潮の流れに近く、冬季も温暖なところではあるが、台風さらに津波などの災害に遭うこともしばしばであった。ここで紹介する二つの漁港は、外海に開けた港としての工夫が見られる。
 室戸岬にほど近い室戸岬港(津呂港)にあった解説板によれば、海中に土嚢を積上げて締切り、内部に潮が入り込まないようにした上で、鑿(ノミ)などの工具で海底を掘り下げ、崖を削って深い水深の漁港を築いたのだという。土嚢を積んだ所は後に土盛りをし、堤防としたことによって四囲を囲まれ外海から守られた良港を築き上げたのだろう。入口はきわめて狭く、高波が直接港に入らないように配慮されている。室戸市街に近い室津港も同様の外観なので、共通した築港法が取られたものと思われる。
 海面は周囲の家並からかなり低い位置にあるのも、もともと崖が没するような海岸地形だったのだろう。いざとなれば狭い港口を封鎖することも可能に見える。災害にも強い造りだ。それを寛文年間(17世紀)に延べ36万人もの人夫を動員して竣工させている。
 現在であっても大規模な部類に入るこの港湾工事を人力のみで達成したと言うことはまったく恐れ入る。その理由として、土佐の東海岸は入江が少なく、風待ちなどに適した港を確保できないという事情もあったのだろう。
 この二つの漁港では鰹漁が江戸期から盛んだった。室津港では、天保の頃には既に鰹だけで水揚量が年間平均10万尾を誇り、問屋を通さず商人と直接取引することが許されていたこともあって豊かな漁民も多かったという。また津呂村では鰹の他捕鯨も盛んに行われており、一つの記録を記すと冬季のひとシーズンに座頭鯨3頭、児鯨25頭、さらに背美鯨8、鰯鯨1頭を仕留め、漁銀283貫を得ている。室戸岬を回り込んだ椎名村とあわせて、土佐における捕鯨の一大拠点となっていた。
 この二つの漁港とも、漁家の家並が港を取囲むように、そして見下ろすように連なっているのが特徴である。伝統的な町並ではないが、水切瓦の見られる家屋や土蔵、平入りの商家風の建物などが混在し、古くから漁業の繁栄を見たことを感じることが出来る。深く切り込んだ入江の風景そのものが、最も印象的であった。
 

 




室津の町並 ここも深く切れ込んだ港の周囲に展開している







室津漁港

 

訪問日:2007.08.15 TOP 町並INDEX