室津の郷愁風景

兵庫県御津町<港町> 地図 <龍野市>
 町並度 5 非俗化度 4 −本陣が6つも存在した有数の港町−




室津の町並 右は脇本陣をつとめていた旧豊野家住宅


 御津町室津は古くは単に室といわれ、播州の主要港として参勤交代時の寄港地、さらには朝鮮通信使(使節団)をも受け入れた歴史的に大変重要な港である。瀬戸内地域はかつて陸路と並び海路も主要な交通手段であり、多くの古い港町を残しているが、この室津もその一つである。
 室津港の地形は非常に特徴的であり、耳形の入江を低い山々が抱く天然の良港そのものといった印象を受ける。山がちな地ゆえに耕作のできる土地はほとんどなく、廻船業、宿泊業、漁業で生計を立ててきた。かつて海上交通の盛んだった頃は、実に六軒の本陣(大名クラスの宿泊施設)があったといわれ、これは他に類を見ない多さである。昭和40年代まで一部残っていたらしい。








海駅館(公開)


 
 現在、本陣の補助的な宿泊施設である脇本陣が2軒現存するのみであるが、その一つ旧豊野家住宅は「室津民俗館」として公開されている。屋号魚屋、豪商の家でもあり、一階は町家形式となる。玄関はくぐり戸付の大戸口となっていて、土間は裏庭まで貫通しており、かつては蔵があり商品が慌しく搬入されていたことであろう。二階は宿泊施設らしく、隠し階段を経て一段高い身分の高い者用の寝室があり、通りに接しては桟(腰掛け縁)がある。この桟も室津の町家の特徴であり、遊女屋風の造りとなっている。なお、室津港に近い嶋屋(現室津海駅館)も廻船業の豪商で、今に残る室津を代表する建造物である。
 室津の町並は、古い町家は更新され連続した町並景観とまでは言えないが、湾の海岸線に忠実に沿って街路がカーブしており、前方が見渡せないため一層路地散策的な、港町らしい佇まいを持っている。二つの資料館を目当てに、この狭い町並にも団体客の姿が若干見られる。これらの施設だけでなく、現存する旧家、史跡を含め町並全体としていかに生かし後世に伝えて行くか、課題を背負っているように見えた。観光スポットとしての二軒の建造物の保存だけでは、それは不充分なものであろう。
 



漁港より町並方面を見る(2003.01撮影)

訪問日:2002.06.02
2014.04.06再取材
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