虫明の郷愁風景

岡山県邑久町<港町・陣屋町> 地図 <瀬戸内市>
 町並度 3 非俗化度 10 −東備の海辺の陣屋町・港町−
 


 虫明は邑久町の東部、備前市の南側に位置する古い港町で、古来備前では牛窓とともに詩歌に詠まれ、風光の美しい地として知られてきた。
邑久町虫明の町並




虫明の町並 伊木家陣屋跡




虫明の町並 虫明の町並
 


 深い湾に抱かれた虫明港は風波が弱く、風待ち・潮待ちに適していたことから、中世には既に瀬戸内海を通行する公私の船が舫ったところである。近世には近隣の産物・商品の積出しが盛んで、沿岸警備の官船も数隻が常備し、海域を巡検していたという。漁港としても特にボラ漁が盛んで、漁船は100隻に及んだという。
 一方政治的には寛永年間以降、筆頭家老の伊木氏はここに陣屋を構え、家臣の屋敷を約50も構えてさながら小城下町のような様相を呈していた。今でも町の一隅には陣屋跡が残るが、その一帯は当時上町といい、周囲に門を築き庶民は内部に入ることを禁じられていたという。海岸には伊木家の用船を入れる船入が設けられていた。侍屋敷の周囲には商業地も発達し、在町としても賑わいを見せた。
 海が浅いのと、後年には東側の日生沖の大多府島が避難港として利用されることも多かったため港町としての大きな発展は余りなく、明治以降は虫明焼、干海老、このわたなどを産物とした。
 現在は余り目立って注目されることのない、瀬戸内の穏やかな海岸の町である。古い歴史を刻んだ姿は町並としては多くは残っていないが、所々に漆喰をまとった中2階の町家や、明治以降になって建てられたらしい入母屋造りの家々が残っている。木造の洋館、虫明郵便局も古くに繁栄した町であることを示している。
 伊木家の陣屋があった周辺は土塀が残り、この一角では城下町・陣屋町の匂いがした。
 


訪問日:2004.04.18 TOP 町並INDEX