六連島の郷愁風景

山口県下関市<農村集落> 地図
 
町並度 6 非俗化度 8 −下関沖の赤瓦と農業の島−






六連島の集落 起伏のある台地上に赤褐色の瓦を持つ邸宅群が印象的だ


 六連(むつれ)島は下関沖6kmほどの響灘に位置する南北1km・東西500mほどの小さな島で、下関駅から徒歩5分ほどの竹崎桟橋から20分ほどの小航海で訪ねることができる。
 長門国豊浦郡に属し江戸期を通して長府藩領。古くから半農半漁の島として発展した。「村浦明細書」によると350人余りの人口を有し牛50、鰯網4、鰡(ボラ)網4、底引網1、船54などとある。しかし徐々に漁より農の重心が増し、現在ではキャベツや人参などの根菜、園芸農業などが盛んにおこなわれている。これは島の中央が比較的平坦な台地状となっており、畑作に適していたことにもよる。
 また関門海峡にも近く会場の要害の地として台場も設けられ、嘉永2年には吉田松陰も視察、幕末の文久期には大砲も備えられた。
 彦島の西に位置する竹ノ子島からは3kmほどであり、電気や水道はこの島を通して引かれ、島の近代化に貢献した。
 船は島の東側に着岸し、港からは丘の上に家屋が散らばっているのが見える。海岸線に平地は乏しい地形とはいえ海岸部に密集する家並が展開する漁村らしい風景ではない。
 坂を上がると視界が開け、緩やかな起伏の台地に意外な家並の展開があった。いずれも赤瓦の屋根を持ち、意外な敷地の広さを持つ邸宅もある。台地とはいえ平坦地には乏しいため、石垣を積み上げて宅地を得た姿も多く、石垣と赤瓦に視界を占められた小路は、この島を象徴するもののひとつだろう。
 小高い所に神社があり、鳥居の前に立つと赤褐色の甍の波と海が見渡せる美しい眺めが展開していた。海域は関門海峡を控えていることもあって大型船の往来が頻々とあって、見ていて飽きさせないものがあった。
 南側は北九州工業地帯の工場群が近くに見渡せる位置にあり、長門らしい赤瓦との対比が印象的であった。








路地風景 石垣が多用されているのも印象的であった 


  
最も高い位置にある八幡宮から集落を見る

  
訪問日:2019.10.14 TOP 町並INDEX