三隅の郷愁風景

山口県三隅町<宿場町・商業町> <長門市>
地図(市地区) 地図(豊原地区) 
 
町並度 4 非俗化度 10 −赤間関街道沿いに開けた宿場町・在郷町−
 



市地区の町並
 
 三隅町は萩市と長門市の中間に位置し、湯免温泉など小さな温泉場はあるものの地味な印象である。
 長門国大津郡に属しており、律令制下の時代から名が見られるなど非常に古い歴史を持っている。
 江戸期以降、ここは城下町萩と港町赤間関を結ぶ街道が通り宿駅が設けられた。古い市街地は山陰本線の駅付近に展開する豊原とそこから東に1kmほど離れた市地区にわかれ、前者には宿駅機能はなく船着場のある商家町であった。
 国道の北側に旧道が残されているため比較的家並は原型を留め、古い町並を残している。市地区はほぼ一直線に連なる家並がなかなか壮観である。平入り妻入り混在で屋根瓦も石見の影響による赤褐色の瓦と渋い鼠色の瓦が混じり一見雑然としている。町の中央には常夜灯が二基残り、そこから分岐する横道は三隅八幡宮の門前へと続いている。また西端では三隅川を渡る位置に古びた石橋がかかり、古くからの道であったことを証明している。
 一方豊原地区では街路が複雑に屈曲していたようで路地風景的に展開する街道筋に商家の建物が散在していた。その様は市地区よりも立派で間口も広く、虫籠窓や立派な出格子を持つものも幾つかある。港の機能もあったことから裕福な商家が多かったものと思われる。「注進案」によると市の62軒に対して豊原は152軒とある。廻船を持つものも多く周囲の年貢米は豊原から積出され萩の浜崎に運ばれた。また仙崎の漁師は魚介類を売りに来、反対に三隅の者たちは薪炭や農産物を積み萩方面をはじめ仙崎、青海島の通などに運び売り捌いた。
 素朴な街道町はその面影を淡くしながらも、住民の意識の持ちようによってはまだその歴史的良さを引出すことは十分可能と感じた。
 




市地区の町並




豊原地区の町並

訪問日:2009.06.28 TOP 町並INDEX