中居南の郷愁風景

石川県穴水町<産業町・港町> 地図
 町並度 7 非俗化度 8 −小半島の先端にある重厚な町並−

 奥能登の入口に当たる穴水町。能登半島の富山湾側は比較的穏やかな海景が展開し入江も多く、この中居南集落も小半島に囲まれた穏やかな内海に接している。
中居南の町並


 古くは中居南村と呼ばれる独立した自治体であった。北隣の中居村と対を成し、それぞれ古くは鋳物産業が盛んであったという。その歴史は平安期にまで遡り、「けぶりが崎に鋳るなる能登鼎」といった記述が見られる。けぶりが崎とは現在の中居地区のある小半島付近を指し、能登鼎(釜)の中心もこのあたりに比定される。
 江戸時代からは漁業も盛んになり、鰯漁や海鼠などの近海漁業が主であったが基幹産業の一つとしていきづいた。中には廻船業を営むものもあった。彼らは蝦夷地まで往来し諸国の物資取引に尽力し、当地に豊かさをもたらした。
 鋳物産業も引き続き行われ、中居地区では加賀藩の御用鋳物として鉄砲も鋳造されていたという。
 町並はほぼ海岸線に沿って連なっている。小さな半島の突端に展開することから漁村らしい狭い路地に密集する家並というイメージを抱くが、佇まいは漁村の雰囲気ではない。それは建物がしっかりとした町家風・商家風の構えであるためで、土蔵も多く目にする。意外性の高い町並である。
 妻入りも一部見られるが多くは切妻の平入りで、板貼りまたは漆喰の真壁造りとなっていて、伝統的建物の連続性が高い箇所も見られた。これはやはり鋳物産業と廻船業が根幹にあったことにより裕福だったことを今に伝えているようであった。
 













訪問日:2013.05.02 TOP 町並INDEX