中崎町界隈の郷愁風景

大阪市北区【都市部の非戦災地区】 地図
 町並度 4 非俗化度 8
 −大阪駅から徒歩圏内に残る戦前の町家群−






中崎西四丁目の町並 中崎西四丁目の町並




中崎西一丁目の町並 タイル貼りの家々が長屋風に
連なる
中崎三丁目の町並
 

 我国の主要な都市は第二次大戦時後半に徹底的な空襲攻撃を受け、大阪もその例に漏れず潰滅的に破壊されている。現在町を歩いても、大都市として近代的な町の風景が表に立つが、奇跡的に焼残った地域も所々に残っている。阪急梅田駅から徒歩5分、大阪駅からも10分足らずの所にもそうした地区があり、しかも比較的広範囲に消失を免れている。
 中崎西・中崎・浮田・黒崎・浪花町にかけてで、さすがに主要道沿いでは淡いものの、路地に入ると古い町並といってよいほどの特徴ある家々が今でも多く残っている。いずれも戦前に建てられたものであるのは間違いない。或るものは、切妻平入りの形を取り袖壁を二階の両端に張出した町家風の姿を示し、他のものは大阪の市街地でよく見られる本うだつ調の突起物を構えている。長屋風に連続している箇所もあった。屋根の勾配が極めて緩いため正面からは一見ビル建築のように見え、またこれは何と呼ぶのか知らないが、正面天端部が二重、三重に積重ねられたような外観を示しているものが多いため、独特の重厚感がある。
 長屋のように連続している建物は二階部はほぼ統一されているが、玄関周りは個々の意匠の違いが見られる。但しこれは後になって各家で改修された姿といえよう。共通の外観の中にはタイル貼りのものもある。それが今に至っても陳腐さを感じないのは、当時としても選りすぐりの斬新な意匠だったに違いない。
 大阪駅・梅田駅周辺は近年大規模に姿を変え、高層ビル街となりつつある。その中にあってこの地区は適度な距離があり、市街地中心とは反対方向で、路地部は奇跡的にも抜本的な開発を免れ続けてきたのであろう。しかし何時まで戦前の町並の姿が保てるかどうかは、全く保証する所がない。一個の歴史の古い町ではなく、大都市の一隅にたまたま残っている非戦災地区である。人々はこれを古い町並的に評価することは、まずなかろう。しかしながらある意味では、保存の手が加わった町並などより一層その価値は高いといえる。
 大都市の住宅地の戦前の姿として、遅かれ早かれ記憶の中に葬られることになるのかもしれない。





浮田一丁目の町並 うだつ調のものが見られる 浪花町の町並

訪問日:2007.01.03 TOP 町並INDEX