波切の郷愁風景

三重県大王町【港町・漁村地図  <志摩市>
 町並度 5 非俗化度 7 
−志摩半島南東端 大王崎を控え風光明媚な風景もかつては海の難所であった−




丘の上から内湾・大王崎方面を見る
 
 大王町波切は志摩半島の南東端、外洋に突き出した地形にある。岬の先端は大王崎といい、灯台が立ち観光名所となっている。ここを境に海域が遠州灘・紀州灘に分かれると言われる地で、付近の海流は激しく古くから難所として恐れられてきた。暗礁も多く、「波切大王なけりゃよい」と船乗りたちに歌われた。波切という地名もそれを象徴するようである。






丘の上は台地状となっており 商家風建築が残り町の中心であったことを物語る


 一方で、大王崎のある小半島に囲まれた穏やかな内海は海難を逃れるのに適した港であり、避難港としても貴重な存在であった。そのため町も発達し、志摩地方南部の経済文化の中心として位置づけられていた。
 また漁港としても、外洋に近い位置にあることから古くから回遊魚や鯨などの大型漁獲に恵まれたところである。
 町の展開する付近の地形は特徴的で、大王崎のある小半島と本土との間に僅かな平地があるが、家々のほとんどは小半島の入江側の丘の上と、本土側の台地上にある。前者ではややひなびた家並が続くが、本土側の後者では妻入り・切妻造りの商家風の建物が目立ち意外性を感じる。ほぼ平坦な一本道に沿い連なっているその風情は、漁村としてだけでなく先に書いたように海運そして地区の拠点として町場が発達していたことを証明しているようだ。
 また丘の上と平地とを結ぶ箇所にも風情ある町の風景が展開する。坂道の両側に石垣が積まれ、石の階段と相まって印象度の強い町の景色がある。斜面を克服するため高く石垣を積まざるを得なかったのと、その石材がふんだんに入手できる土地だったことによるのだろうが、内湾を見下ろす遠景を見ながら見事な風景であった。
 




石垣が主役の印象的な風景も残っていた




 

訪問日:2013.08.13 TOP 町並INDEX