宮内の郷愁風景

山形県南陽市<門前町・在郷町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 9
− 熊野神社の門前町に端を発し米沢盆地北部の中心として発展した−






宮内の町並


 宮内は温泉地の赤湯とならんで南陽市の中心市街地の一つで、米沢盆地の北縁にある。南陽という市名はこの地とは全く縁もゆかりもないもので、昭和の合併時に2つの市街地が相譲らず、当時の県知事が中国の故事から引用したものである。
 9世紀に紀伊国熊野権現の勧進を受けて熊野神社が建立されたところで、日本三大熊野の一つに数えられ古くから信仰をあつめた。宮内という地名も熊野神社の門前町という意味合いが込められ、八坊一社家と呼ばれた関係者が門前に居を構えていた。明治初期に郷社となるまで、地区の歴代諸氏の崇敬の中心となった。
 江戸時代は米沢藩領で上杉氏の臣であった安部氏によって初期に町割が整備され、安部氏の家中屋敷をはじめ諸町が立てられた。17世紀前半の元和期には既に鍛冶4・大工6・屋根葺2・石切2などの記録が残っている。商業も盛んになり、酒や絹糸、紅花、綿などの問屋が多く存在し、また大規模な米市場もあり、藩の役人が大量に買い入れたという記録もある。米沢盆地北部の政治経済の中心的なところだった。
 地図を見ると田園の中に市街地の塊があり、街路が比較的秩序立っているのがわかる。門前町として整備された頃から変わっていないのだろうか。門前付近を中心に古い建物も少なからず残っていた。土蔵が目立ち、妻入り平入り混在の商家だっただろう建物が散見される。通りに面する間口に比べて非常に深い奥行の土地を持ち、複数の土蔵が残るものもあった。これらは在郷町として賑わったころの名残なのだろう。
 旧家や町並を残そうという動きは見た所全くないようだが、歴史性がありその価値のある町並と思う。
 
 
 




左に熊野神社の鳥居が見える





訪問日:2015.09.21 TOP 町並INDEX