楢下の郷愁風景

山形県上山市<宿場町> 地図 
 
町並度 4 非俗化度 5 −茅葺屋根と石橋が印象的な羽州街道の宿駅−
 





楢下の町並


 楢下
(ならげ)は温泉地として知られる上山市の市街地より東側、山形盆地に流れ込む金山川沿いに立地し、周辺は丘陵地帯である。道をさらに山側に辿ると宮城県に抜けることができる。
 この道は古くは羽州街道と呼ばれていて、この楢下には宿駅が設けられていた。陸奥との国境を越え初めての宿場で、いわば峠下の宿である。そのため町は賑わい、大名通行のための本陣・脇本陣も定められた。当宿を通過する大名は大小あわせて13を数えたという。
 この宿場では街道の形状も特殊だった。町場は新町・下町・横町・上町で構成されていたが、道は町の境界でそれぞれ折れ曲り金山川を二度横断する。旅人はここで歩を緩めるわけには行かなかったのだ。
 ここでは宿駅当時の建物が茅葺屋根を従えて幾棟か残り、印象的な風景を形作っている。現在車が多く通過する県道13号線沿いには一棟しか残っていないが、なるほど川を挟んで複雑な街路形態を示した当時を物語るように、横道と川の対岸に散らばって見られる。
 川を渡る箇所には明治になって最先端の技術とともに石橋が架けられた。2基が現在でも現役で、知らぬ人が見ると何故こんな所に古びた石橋があるのか不思議に思われることだろう。新町と下町の間にある新橋は、架橋費用の一部を通行人から徴収したという珍しい橋である。
 茅葺民家の約半数は空家で、訪問客のために無料で公開されていた。中には移築されたものもあり、町並としても連続したものではない。但し石橋という近代化遺産が残っているということは、明治以後もこの町がしばらく文化の先進地であったということを証明しているようであった。




街道は屈曲しながら川を二度渡る独特の形態を持つ。




宿場内に残されている石橋の一つ覗橋

訪問日:2005.05.22 TOP 町並INDEX