名手の郷愁風景

和歌山県那賀町<宿場町> 地図 <紀ノ川市>
 
町並度 5 非俗化度 8 −本陣の遺構が残る大和街道の宿駅−
 

   紀ノ川沿いは右岸側が古くから交通が発達していた地域で、現在でも国道や鉄道はこの北側を通っている。最も古いのが和歌山城下と大和を結んでいた大和街道だ。
名手市場の町並 細い旧道に沿い町家建築が見られる




 






 名手は紀伊東端の町である橋本とならびその宿駅だったところだ。しかもここには本陣が置かれ、その遺構が現在に残っている。国重文に指定されているこの妹背家は中世以来の地元の土豪で、寛永7(1630)からは名手組の大庄屋を勤めた旧家だ。
 本陣とはいってもこの街道は和歌山藩主しか参勤交代時の利用がなかった。とはいっても享保年代初期(1715年頃)に建築された主屋をはじめ、御殿や複数の蔵を従えた姿は堂々たるもので、土塀に囲われた庭園も美しい。
 この本陣付近を中心に、伝統的な町家建築が見られ古い町並を残している。洋風建築も残り賑やかなところだったことが想像できる。宿場町とはいっても主要道ではなかったため街道の幅は乗用車の離合も難しいほどで、印象的には小さな在郷町といったたたずまいである。しかし、高野山に向う旅客も多くここを通り休泊していったはずで、町場としての大きな賑わいがあったに違いない。
 宿場町として役割を終えても、鉄道の開通により地域の拠点として商店が集積し、那賀銀行の設立、また近くに鉱山があったこともあってその積出などで駅周辺を中心とした繁栄があった。今では和歌山線は幹線交通としての役割はなく、また国道も南側に離れて建設されたため、旧街道沿いはひっそりとしていた。




解体修理され原型を留める旧名手宿本陣

訪問日:2011.08.14 TOP 町並INDEX