根羽の郷愁風景

長野県根羽村【宿場町】 地図 
 町並度 3 非俗化度 10  −三河・美濃との結びつきが深かった矢作川最上流部の村−

 根羽村は県の南西端、西から南は岐阜県や愛知県に接し、水系も三河湾に注ぐ矢作川の最上流部にあたる。長野市や松本市などよりは東海地方の町々の方がはるかに近く、古くからもそれらの地域との結びつきが強かった。
根羽の町並






 中世には三河国足助荘の郷の一部で、天文年間(16世紀中盤)に信濃国に編入されたとされている。江戸時代は下伊那郡の南端に位置する三信国境の村として
位置づけられた。
 三州街道(三河では伊那街道)は三河地方から信州へ塩をもたらす道として重要な街道で、別名中馬街道とも呼ばれていた。中馬とは当時宿駅ごとに荷物を運搬する馬を変えなければならないしきたりに反し、複数の宿場をまたいで荷を運ぶ「通し馬」のことで、この街道ではそれが頻繁に行われていたことによる。それだけ塩は貴重で、信州特に伊那地方の各地にとっては重要な街道であった。
 根羽には伊那地方最南端の宿場が設置され、ここから美濃岩村に向う道や、三河新城、吉田(豊橋)方面に向う新城道も分岐しており交通の要衝であった。旅籠や馬宿、荷問屋などが多く賑わった。この街道は善光寺や秋葉山、伊勢宮を結ぶ線上にもあたっていたので、それらの参拝客の往来も盛んだった。
 三州街道は明治から大正にかけて近代的に改修され、他に先立って貨物自動車が走るなどその後も主要街道並の扱いを受けていたが、標高の高い山岳部が多く、また鉄道の開通などによりこのルートは次第に衰微していった。
 村の中心部にかつての宿場町、そして商業も栄えた面影は淡い。所々に残る平入りの建物は、1階部が開放的な造りとなっていることからかつて商店だっただろうことが伺えるが、いまやその軒数も少ないものとなっている。
 ここから国道153号を西に向うと数kmで愛知県となり、30分も走れば紅葉の名所・香嵐渓を擁する足助に達する。
 
 






訪問日:2017.07.17 TOP 町並INDEX