根雨は鳥取県の南西部、山間の町日野町の中心集落である。
ここより四十曲峠を越えて美作の国に抜ける出雲街道から、鍵掛峠を越えて備後の国に至る日野往来へ分岐する節点として古くから交通の要であった。現在でも国道の分岐点となっている。かつては宿場町であると同時に、この地区で盛んであった製鉄業の豪商の家が残っている。この近藤家は町並南部に位置し、黒漆喰塗りの本二階建、1階部分もほとんど何の改修の手を加えられていない。邸内には蔵も多数従えたまさに豪邸である。
この近藤家そのものが町並景観に寄与している。付近には旧日野町公舎などの伝統的な建物が残り、古い町並を形成している。しかしそこから北へ少しはなれた郵便局の辺りにも数軒の袖壁を従えた町家建築が連なっているが、古い町並としてはそれほど広範囲に連続して展開するものではない。
本陣は現在は形を留めていないが門だけが残り、松江藩主の参勤交代時には峠下のこの根雨に必ず投宿したことから、17世紀には既に宿場としての態勢が整っていたと推定されている。
山陰の町並らしく石州瓦の割合が大きい家並には、澄んだ水が勢いよく流れる水路が流れ、町並の景観が一層引締って見える。かつては生活用水の全てであった。一部の民家ではこの水を庭に引き入れ、鯉などを飼育している姿も見られた。水のある風景を町並共々大切にしていただきたいものだ。
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