根津の郷愁風景

東京都文京区<都市部の非戦災地区・住宅地> 地図
 町並度 5 非俗化度 6 −本郷台地麓の谷底の町−

 






根津の町並風景を代表する木造三階建建築 登録文化財にも指定されている


 根津は文京区の東端の一角を占め、西は坂を上った台地上の本郷、北は千駄木、東は台東区谷中に接しており、南側は上野公園不忍池に至る。付近は武蔵野台地の末端となる本郷・上野の両微高地に挟まれた低地となっている。
 この谷間に昔は藍染川という川が流れていた(現在は暗渠)。現在の豊島区巣鴨辺りを水源としたこの川は、台地を削りながらこの谷を下り、不忍池に達していたのだという。そう説明されると納得のいく地形である。川沿いに古くから商業が栄えていた土地で、染物屋が多く、川が藍色に染まったから藍染川、また源流の巣鴨染井という地名からなどといういわれが案内板に書かれていた。町の西端にある根津神社境内は緑深く静かで、絵画をする人、犬の散歩をする地元の人などが眼についた。大きな神社で、かつては門前に遊里が存在していたという。その遊女とのからみで、最初に会うから藍染(初め)川という説もあるようで、想像を色々巡らしながらの町歩きも楽しい。
 この町の魅力は戦災の影響をほとんど受けなかったことで、東京の古い町の姿が多く残されている点である。桁を屋根下に張り出した出桁造りの町家が見られ、狭い路地が展開するのは隣合せの谷中の町並と共通するが、異なる点もある。正面の一部またはほぼ全体を銅板に被われた家屋が多く残っていることと、切妻平入りの家屋の前面に胸壁を立ち上げた看板建築が多く見られる点である。それはここが戦前から商業が栄えていた地区であることを示しているようであった。銅板の古錆びた緑青の色を見ると、俄かに都会の中の下町風景という風情が感じられる。
 地下鉄根津駅に近い場所に周囲からも一段と目立つ三階建の木造建築がある。現在は食事処として使用されているが、かつて下駄屋として建てられた明治期の建物が、関東大震災や戦時の空襲にも堪え、都心ともいえる地区に現在まで生き残っているのは誠に貴重という他ない。この建物があるかないかで、この町並の印象は異なるものになるだろう。串揚屋として新しい命が吹き込まれるその経緯を知ると、危ないところだった、この町並のランドマークが消える所だったという感がする。
(こちらを参照下さい)
 町の中央を不忍通りが分断していて、そこだけが近代的な都市部の住宅商業地で、あとは路地風景が支配していた。






根津の町並は出桁木造建築・看板建築などが多く残る

訪問日:2006.11.05 TOP 町並INDEX