多里の郷愁風景

鳥取県日南町<宿場町> 地図 
 町並度 4 非俗化度 10  −国境に位置する峠下の宿駅−








多里の町並


 日南町は鳥取県最南西部の山間の町で、日野川の開いた谷の一番奥にこの多里集落がある。南は備後との国境の鍵掛峠を控え、西は出雲横田へこれも峠道であった。山深いところにある割に平地が開けていることもあり、ここは古くから町が開け、峠下の宿駅としてかなりの賑わいを見せたところである。
 日野街道と呼ばれる往来がここを通り、17世紀半ばの慶安年間頃に宿駅として定められ、その後問屋、番所や制札場なども置かれ、国境の地らしい構えをなしていたという。周囲は鉄の産地でもあり、また良質の石灰も産出されたことから産業町としての性格も帯び、また物資集散地として在郷町としても発展していた。牛市をはじめとして定期的に市が開かれていた。
 備後・出雲いずれの道もここから先は険しい峠道であり、旅人たちはここで一時の休泊の時間をすごしていたのだろう。
 街道の町らしく一直線に家並が展開する。国道が川の東側に建設されたため、この旧日野往来はそのままであり、家並が大きく崩されることなく約1km近くに渡って残っている。
 この辺りの冬は厳しく、また宿場としても大名行列をはじめとした大通行のない小さなものだったため家々の造りは簡素だったのだろう。従って江戸期や明治期にまで遡るような古いものは少ないようだったが、平入りの渋い木造建築が連続していた。洋風の建物もあり、山峡のこの町が賑っていたことを示しているようだ。





多里の町並





多里の町並


訪問日:2005.10.24 TOP 町並INDEX