本町・古町界隈の郷愁風景

新潟市中央区【商業町・花街】 地図
町並度 5 非俗化度 5 −北前船による恩恵を市街中心に見る−


 新潟の市街地は港町として17世紀には町が整備され、特に信濃川左岸一帯には商家が建ち並んだ。古くは新潟津と蒲原津、右岸側の沼垂湊をあわせて新潟三ヶ津と呼ばれたが、江戸中期以降発達したのは新潟津であり日本海側随一の港であった。その発展の一番の要因となったのは西回り航路の発達によるところが大きい。
 市街地は第二次大戦時に空襲が無かったものの、戦後大火や地震により大きな被害を受けており、古くからの町並の見られる地区は限定的となっている。その中で本町から古町にかけての一帯には今も色濃くその残照が感じられる。この界隈は港の発達によって最初に町が開けたところでもある。
 本町通の一本東側の上大川前通にある旧小澤家は北前船の時代館という名目で公開されている。廻米の輸送を中心とした廻船業者で、宿泊業など商いを拡大した。角地に建ち二方向に黒板の塀を巡らせ非常に存在感のある邸宅である。付近には「港茶屋」として営業されている片桐家(登録有形文化財)、刃物製作所との看板のある建物と風情ある横路地など、港を背景にした商家群が見所だ。また本町通では、昭和を感じさせる本町下市場商店街が展開している。フレッシュ本町と呼ばれるが明治初期の露天に遡るほど歴史が古く、今も歩道に商品が並べられるなどその趣がある。様々な商品を扱い、地元の方々に愛される市場のようであった。
 


 


 
東大川前通にある商家の建物 いずれも店舗などとして利用される
 



 
 東大川前通12番町 本町通の下市場
 
 
 本町通から西に東堀前通を挟んで200mほどのところにも趣の異なった町並が展開している。この古町通は、南部では現代の繁華街や商店街といった趣であるが、国道より北の8・9番町と呼ばれる辺りは古い町並らしい雰囲気を帯びて来る。町並景観を構成するのは飲食店群であり、独特の風情がかもし出されている。或る料亭は、漆喰に塗られた立派な壁が巡り、厳かな中庭を従えた奥に木造三階の主屋が控えていた。また他の店舗は路地奥に連なる置屋風の二階部分から、稽古の最中なのか三味線の音が昼間から聞こえて来る。建物の並びという点では京都祇園をも凌駕するものがあるようにも感じる。東堀通りに面して三階屋や土蔵が並ぶ風景は迫力を感じさせる。
 ここも北前船の置き土産と言ってよく、江戸中期には花街が形成されたと云われ最盛期に芸妓400名を数え、今でも芸妓を配する料理屋が14軒ほどある。古町通りを軸に隣接する通りとの間に新道と呼ばれる路地が巡り、そこに古くから料理屋が密集した街区が展開していた。そういった路地に足を踏み入れると、祇園の料理屋の連なる小路を歩いているような錯覚にとらわれる。
 市は文化遺産としての価値を認識しており、この古町界隈の町並景観の整備、建築物の修景などを進めている。
 
 


 
 料亭「鍋茶屋」の建物 東堀通からもその厳かな構えが見られる
 

 

 小路や路地にも料理屋が密集している


訪問日:2024.04.12 TOP 町並INDEX