千屋の郷愁風景

岡山県新見市<産業町> 地図
 
町並度 4 非俗化度 9  −砂鉄採取・製鉄業で栄えた山間の町−




千屋の町並


 新見市街地より国道180号線を北に10km余り、山間部に開けた小盆地といった狭い平野部に展開する千屋地区。近年では和牛の山地として知られ、千屋牛はブランド名となっている。
 この地域の発展の基礎は江戸時代の砂鉄採取業であった。中国山地一円で行われ、重要な基幹産業であり、当初は農間余業であったが次第に産業として位置づけられ、付近を流れる高梁川では鉄穴流し(採取した土砂から砂鉄を精製する作業)が盛んに行われていた。またたたら製鉄も行われ、山内と呼ばれる製鉄業に従事した作業員の集落も存在していたという。
 高梁川の上流域にあたり、鳥取県との境に近いこの付近だが、地形から受けるイメージは峠を控えた山峡の地というイメージではなく、比較的平地が開けた中にある。山陰の影響を受けた赤褐色の瓦が目立つ佇まいは、伝統的建造物というほどの格式あるものではないが統一感がある。高梁川を挟んだ向い側には、土蔵を複数従えた屋敷が見られ、製鉄業でのかつての繁栄を今に語り継いでいるような風景であった。
 なお、この山間の集落にあって、江戸時代から続く旅館が未だ現役なのは驚くばかりである。
 




赤瓦屋根の見える建物は現役の旅館である







訪問日:2015.03.22 TOP 町並INDEX