仁尾の郷愁風景

香川県仁尾町<港町・商業町> 地図
町並度 5 非俗化度 8 −水路を境に対照的な町の姿−
 




 
仁尾の町並





 仁尾町は県の西部の瀬戸内沿岸の町で、町の東から北側を荘内半島の丘陵に囲まれた穏やかそうなところだ。半島西岸を北上する幹線道路は町の中心付近では新しい埋立地を走り、古い町並の存在を感じさせないが、細い水路を挟んだ向い側に歩を進めると俄かに細い小路が錯綜するようになり、建物も古びてくる。所々に中二階形式の伝統的な家屋が残り、本瓦を葺いているものも多く重厚さを感じさせる。
 ほぼ中心の位置に黒々と焼いた杉板に囲われた大きな建物が見える。名産・仁尾酢の醸造場で、創業250年以上を数え、現在でも機械に頼らない伝統的な手法で酢が造られているという。少し離れた所にある店舗も漆喰と海鼠壁の意匠を持つ古風な出で立ちである。小さな町に不似合いなほどの産業だが、江戸時代に統治されていた丸亀藩より、酢をはじめ酒や醤油などの醸造業が特権として許されていた名残である。
 中世には城が構えられ、その時に現在の町場の外郭が整えられたというが、今に残る町並の発展は主に港町としての発展によるところが大きい。山が迫る地形で耕作地に恵まれないため、漁業が盛んな土地であったが、加子という有事の際に徴用される水主も多く、藩がこの町に海事力を委ねていた姿勢がうかがえる。瀬戸内地域の交易にも積極的に進出し、物資の中継地として、産業が立地する基盤が作られていった。
 近年は港町としての機能は薄れ、蜜柑や除虫菊などの栽培や、養殖漁業などが主な産業である。かつての港町は埋立地の奥に陸封され、新しい市街地との対比が面白い。

 
仁尾酢の中橋造酢








訪問日:2007.03.15 TOP 町並INDEX