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| 豊田町西市の町並 | |
この豊田町付近は中世より市場が盛んに興った場所である。西市という町の中心集落もその名残を留める地名だ。 木屋川中流域に開ける盆地という地理的優位さによりまず開けたのは、西市よりやや下流側の中村地区であった。川を挟んで東の市、西の市といった。西の市は度々河川の氾濫の影響を受けたため、江戸期になって上流側に移り、これを今市と呼んだ。その後この今市は寛永3（1626）年より西市と改称され、かつての西の市は古市と呼ばれるようになったという。なかなかややこしい。それだけ盛んに市が立っていたのだろう。 流域の上流側からの各種産物が集まり、「地下上申」によると「市日二日、十日、廿一日、毎月興業市立申候」とあって、月に六度の市が立っていたことがわかる。 また幕末より魚市場が発達し、1日おきに競りが行われ、仲買人も30余軒を数えた。内陸のこの土地で魚市場とは奇妙だが、西は響灘、北は日本海からの街道が合流し、近隣の農村への魚介類の供給地として大いに賑っていたという。この頃には城下町長府から転任し、酒造業を営んでいた中野家の事業により、木屋川が荷船の遡行が可能なまでに開削され、豊田地方の発展を一層高めた。 中野家はこの西市村において本陣も勤めていた。幕末期には赤間関と長府、俵山（温泉）、正明市（長門市）とを結ぶ赤間関街道の、通称北道筋の宿駅としても指定されており、萩藩の大名等の休泊もあったのだろう。 古い西市の町場がそのまま現在の町の中心となっているため、古い伝統的な建物はそれほど多く連続しては残っていない。しかし赤瓦を冠し、木部の目立つ古い形式の家屋が目立つのは、古い町らしい格式を感じさせる。漆喰のほとんど剥げ果てた平入りの町家があり、その前には本陣だった邸宅が、門だけ残して更地となっていた。その姿にかつての繁栄を見出すことは不可能だが、周囲に重心の低い空気が漂っているような、古い町独特の匂いが感じられた。 |
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 町並 |
| 路地風景 | |
 本陣の門が保存されていた |
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