安良里の郷愁風景

静岡県西伊豆町<漁村> 地図 
 町並度 4 非俗化度 8 − 入江奥に開ける西伊豆の集落−


 

安良里の路地風景 
 

 西伊豆町安良里は伊豆半島西岸中部、西は駿河湾に接し南西側を半島に取り囲まれた深い入江の奥に集落が開ける。
 阿良里・阿蘭里などとも記され、新たに開いた里の意とも。中世には地形を生かして小田原北条氏の水軍基地として城が構えられたが、豊臣秀吉の小田原征伐の折に攻められ落城したという。
 宝暦12(1762)年の記録によると百姓47・漁師39とあるから半農半漁の集落であったことが伺える。ただし、小物成(租税の一種)
としては鰹その他の漁獲品が多くを占めていたことから、漁村的性格が強かったと考えられる。その他船乗り14・杣7・鰹節の製造7・船宿7などとある。鰹節は当地の名産品とされ、享和年間頃に土佐より技術が導入されたことで品質が向上、販路を拡大したという。
 国道は山側をやや迂回する形となり、町並は漁港に接するように南北に細長く展開する。集落北部の小川に沿ってはやや内陸にも伸びている。港から一本入った通りが古くからの中心と思われ、旅館を思わせる立派な二階屋も見られた。特徴的に思ったのが下見板貼りという、板材を貼り合わせたような建物が多いことだ。近代洋風建築にも多く用いられた技法なので、一見洋風の印象を抱く。それらが枝道や路地奥を中心に展開し、独特の家並風景が見られた。
 
また伊豆半島特に南伊豆地区の民家の特徴として海鼠壁があり、ここでもあちこちで眼にすることが出来る。但し多くは土蔵で、住宅の母屋などに採用された例は少ないようであった。
 今でこそ半島や岬をトンネルで短絡し安易に訪ねることができるが、西伊豆地区は地形が
険しく近代になっても交通は海路による割合も大きかった。昭和7年に県道松崎土肥線が開通すると下田自動車のバスが走りだし、公共交通で結ばれた。


 


 
メインの街路には旅館を思わせる建物も見られる  


 


 
 路地を中心に海鼠壁も多く見られる
 

 
          
訪問日:2022.04.10 TOP 町並INDEX