西陣の郷愁風景(1)

京都市上京区・北区<産業町> 地図(1枚目写真付近)
 
町並度 6 非俗化度 3  −織物業者のひしめく京都らしい家並−




 西陣という言葉から人は誰も織物の最高級ブランド西陣織を想像するだろう。現在西陣と言われている地区を訪ねると、近代的ビルから町家風、そして洋館風に至るまで、織物業・繊維業に携る建物が密度濃く存在している。 古くは秀吉の政策によって産業誘致、町の整備が進められた地域ともいわれ、その歴史は深い。
芦山寺通千本東入戌亥町の町並




 
紫野南舟岡東町の町並 五辻通智恵光院西入五辻町の町並
 

 
 西陣の名は住居表示には一切登場せず、凡そ千本通・鞍馬口通・堀川通・丸太町通で囲まれた地域を指すように思われ、今でもその地域に西陣織業者がひしめいているが、その周辺部にも店舗名等に西陣の名が見られ、小規模な業者がなお眼につく。
 この地区の古い家並は、江戸期の大都市型の外観をよく残し、非常に間口の狭い中二階または二階建、全て平入で、古いものでも明治以降に更新されたものがほとんどであるようだが一部漆喰で塗り込められていない小さな虫籠窓を配したものも残っている。奥行の深いうなぎの寝床状の町家が多く、隣同士はほとんど密着しており碁盤目の町割の中での敷地は整然としているようだ。但し旧市街から外れる北部では、派生した狭い路地や袋小路が多く存在し、西陣の典型的な路地風景を醸し出している。
 路地を歩くと、格子の家並の所々で今でもせわしない西陣織の音が聞えてくる。また、この地域はかつて度重なる大火を出し、それが近隣同士の連帯感を生み防火態勢に細心の注意を払っている様子が伺える。この地区の小路は近代になっても拡幅されることがなかったのだろう、とりわけ狭いものが多く、軒先の赤バケツに水がたたえられているのも、市内ではこの地区で最も頻繁に見られる。
 学生用のマンション、更新された新しい民家がこの地区にも乱立し、統一感は失われているが、今出川通の一本南の元誓願寺通、一条通、北側の寺ノ内通などを中心にまだ西陣らしい町並が見られる。周辺には寺も多く散見され、洗練された京都らしい雰囲気のある地域である。建築物の高さ制限など町並全体の統一感は厳守されているが、祇園地区のように本格的な保存は活発でないらしく、マンション建築予定地が広大な空き地となっている箇所も見受けられ、あるいは狭い町割に合わせ独特の背高家屋が軒を接して建てられている光景も多く眼につき、虫食いのように徐々に侵蝕されている。後の語り草となってしまわないように、何らかの保存対策が講じられることを願いたい。


 


大宮通五辻上ル西入紋屋町(紋屋図子)の町並




智恵光院通寺之内下ル古美濃部町の町並 智恵光院通五辻上ル東入紋屋町(紋屋図子)の町並

    ※2009年2月最終訪問時撮影
  ※ここでは北部地域(今出川通より北側)を紹介しています。


訪問日:2002.10.13
(2009.02.01最終取材)
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