錦の郷愁風景

山口県錦町【商業町】 地図 <岩国市>
 
町並度 3 非俗化度 8 −錦川中流に開ける盆地の町−


中心街を東に外れた地区に幾分か古い町並が見られる
 岩国市に流れ下る錦川の中流、小盆地に錦町の中心街がある。もと広瀬村といったこの町は古くからさまざまな産業が発達した。
 その代表が紙漉きで、江戸後期には120軒ほどの業者がおり、萩藩は専売制をもって他の地域への転売を禁じていた。また原料となる楮の生産者に、その生産量に応じて紙を納入させる請紙制度を導入している。藩は大坂方面に販売していたという。その他麦・蕎麦・大豆などの穀類の生産も盛んで、周囲の山間地では熊や鹿、猪などが狩猟され、村人の生活も安定していた。
 請紙制度が緩和されると紙をはじめとする物品が自由に商取引されるようになって、特に明治に入ると旅館や各種商店が建ち並ぶようになった。周囲の深い山地からこの盆地に物資が集まり、陰陽連絡の街道も通っていたことから発展し、現在とは比較にならない賑わいを見せていた。
 周辺各地域からの道路も比較的早く整備され、それを追うように国鉄岩日線が戦後になって開通した。活気を呈していたのはその頃までだろう。その後は自動車交通の発達で線名の由来となった山口線日原までの全通は凍結され、さらに国鉄から見放され民営鉄道として受け継がれた。
 静かな山間の町で、中心市街地は商店街となっているが活気に乏しい。伝統的な構えの建物はごく一部で、この中心街から古い町並を感じることは困難である。
 






 この通りから東側の山裾にかけてはそれでも幾分か風情のある佇まいが残っている。酒造家の土蔵や土塀に囲われた屋敷なども見られ、漆喰の塗屋造りの建物も見られた。小高いところにある広瀬神社から見下ろすと、赤瓦の屋根が比較的多く眼につくのが意外に思われた。
  
訪問日:2011.03.27 TOP 町並INDEX