壬生川の郷愁風景

愛媛県東予市<港町> 地図  <西条市>
 町並度 5 非俗化度 9  -伊予を代表する港湾都市−
 




壬生川の町並(国道196号南側)


 
登録文化財・越智家住宅
 西条市街地から西へ10km弱、壬生川地区は燧灘に面する町である。地名の由来は河川の氾濫に悩まされたことから水を火で乾かすという意味で丹生川と呼ばれ、その後壬生川と記されるようになったという。 




 




国道より海側に展開する町並 漁師町的な雰囲気も漂っていた
 

 古くから港湾が発達してきた。万治2(1659)年、藩による大規模な港湾整備が行われ浜番所が置かれたことから、物資輸送の中心となった。背後の峠道も四国山脈と高縄半島の山地との鞍部にあたり険しくなく松山からの往来も比較的容易だったこともあり、海陸連絡の要地として着目されたと考えられる。港は領地内の年貢米積出港としても利用され大いに繁栄した。
 17世紀後半の寛文年間の記録では家数110軒に対し船37・加子
(公用船の諸雑務を補佐する役)82との記録がある。
 大正頃には山間部の千原鉱山鉱石が積出されるようになり、昭和に入ると海岸部に続々と工場が建設され、現在に続く港湾形態が形成された。
 市街地は予讃本線の駅から見ると北西側が古くからの町の中心で、住宅と混在する商業地となっている。昭和の雰囲気の残る商店なども見られる一帯だが古い町並というイメージではない。
 ところが国道196号を境に海側では様相が大きく変わる。木質感の高い家々が軒を接した路地風景が展開する。二階部に木製欄干を持つもの、出格子を持つもの、中には入母屋の立派な屋根をもつ家屋もある。殊に国道に面し長々と板塀をめぐらした屋敷が特筆される。この越智家住宅は登録有形文化財で、木蝋の販売などを行っていた商家である。後期には大坂方面から肥料等を仕入れ販売していたとのことで、まさに港の恩恵を受け富を築いた旧家である。
 訪ねる前は古い町並としての期待度は低かったが、予想外の町並が見られやはり実際足を運ぶに限ると再認識した訪問となった。
 


訪問日:2020.11.23 TOP 町並INDEX