内浦重須の郷愁風景

静岡県沼津市【漁村】 地図
町並度 5 非俗化度 10  −様々な表情の蔵が見られる集落−
 


 










内浦重須の町並 煉瓦蔵・石蔵など個性豊かな蔵が印象的だ 

 

 沼津市は東海道本線などが通る市街地側とは別に、内浦湾を挟んで伊豆半島側にも市域を持つ。この半島北岸地域は山地が海に迫り優れた景観を有しており、対岸には富士山を望むことができる。
 内浦地区には入江ごとに集落が点在しており、一部では観光施設も見られるが、多くは中小漁村集落である。
 その中で重須集落を訪ねた。中世には三津庄が置かれ、集落の東端には小田原北条氏の水軍拠点となった長浜城址があるとのことだが、現在は平和な漁村集落という趣で漁船をはじめ遊漁船、レジャー船なども数多く停泊している。
 江戸期ははじめ幕府領、その後陸奥棚倉藩領、下総関宿藩領などと変化し、後期には旗本大久保領となり幕末を迎えた。製塩が盛んに行われていたほか、廻船や漁船を有し鮪や鰹、鮭、めじかなどが水揚げされ海漁運上として納められたという。天明5(1785)年の「村差出帳」では300名弱の村民を有し、馬3・牛4・酒屋一軒あり、漁業は東隣の長浜村との関係が深く漁獲は両村で配分する仕来りになっていたとある。 
 道を挟んで集落に入るとまた空気が一変する。それは家々の多くが蔵を従えているからだろう。石蔵・煉瓦蔵など個性豊かで、特産の伊豆石を用いたものも多く見られ暖かな風合いを醸していた。住宅は伝統的な構えを持つものは少ないが、蔵を配した風景は探訪するに十分なものがあろう。
 集落内を歩く限りでは漁村らしい特徴は少なく、どちらかというと農村集落に近いものを感じる。蔵を従えるほどの裕福な家々は、あるいはもとは製塩により財を築いた御宅だろうか。詳しい所はわからなかった。
 
 
 

 



訪問日:2022.04.10 TOP 町並INDEX