温湯の郷愁風景

青森県黒石市<温泉町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 6 −黒石温泉郷の一つ 400年の伝統を誇る−





温湯温泉街の町並




 黒石の市街地から東に10km弱、浅瀬石川の右岸に展開する温湯温泉街。付近には小規模な温泉地が点在しており、黒石温泉郷と呼ばれている。十和田湖さらに八甲田、酸ヶ湯方面にも便利な位置にある。




独特の宿泊施設である客舎が残る 左:後藤客舎 右:土岐客舎

 
 温湯温泉のはじまりは400年以上前に遡る。伝説によると足に怪我をした鶴が毎日同じ場所に現れ、やがてそれも癒えて飛び立っていったのを見て、その場所に温泉が湧いているのを発見したというもので、鶴の湯とも呼ばれる。温泉街の中心にある共同浴場の名にもなっている。寛永期には温湯と呼ばれるようになったという。
 入浴後数分もすると身体がよく温まることで古くから広く知られた温泉場となり、歴代の津軽藩主も頻繁に訪れたという。また湯治目的の一般人の入湯も多く、温泉街は賑わった。宿屋や湯守には役銀の上納が義務付けられていた。
 江戸中期の安永期の記録では、春や秋には青森や鯵ヶ沢から遊女を集め、揚屋が存在したとあり、遊興の色も帯び大層繁盛したであろうことが伺える。
 またこの地域は古くから木挽が盛んだったこともあり、津軽系こけし(温湯こけし)の中心地としても知られる。共同浴場の入口や旅館の玄関先にも飾られている姿を眼にすることが出来る。
 温泉街は小規模なものだが、温泉地としての風情を濃厚に残している。あちこちに「客舎」と名のついた建物が見られる。これは湯治客主体であった歴史を物語るもので、内湯は無く客はこの宿舎で自炊し、共同浴場で入浴していたものである。一部は現役で営業されているとのことだ。この温泉客舎と呼ばれるものはこの地方独特のようで、他に大鰐温泉などで見ることが出来る。
 川に近い通りにはやや大型の内湯旅館も数軒見られ、木造も堂々たる風格の飯塚旅館など、古い町並としても風情を感じるものが残されていた。
 私はかなり前にこの温泉地に泊ったことがあり、今回も同じ旅館に宿を取った。古びた共同浴場が新しくなっており、そちらは家族連れなどが次々と訪れ近年の日帰り入浴施設に似た雰囲気があったが、それ以外は変化が感じられず、湯治場の雰囲気の濃い昔ながらの温泉町であった。
 
 




訪問日:2016.12.31,2017.01.01 TOP 町並INDEX