大下島の郷愁風景

愛媛県関前村<農村集落> 地図 <今治市>
-好漁場に恵まれるも一貫して農業を生業としてきた島-
 町並度 5 非俗化度 9



 
背後の小高いところから望む大下島の集落
 大下島は大三島の南西2kmほどのところ、面積1.5㎢の小さな島である。ここから西に小大下島、岡村島、さらに広島県の大崎下島と本州に向い列島をなしている。
 島はほぼ山地で占められているものの西岸に湾入した地形があり、わずかな平地がある。集落はこの地区に集中し、町並を形成している。
 
 



 
 



 
 大下島の町並
 

 江戸期を通じて松山藩領で、享保年間頃の記録では、55軒のうち48軒が百姓家であり、海にかかわる統計は水主家8、他に塩浜の運上銀が計上されているだけだ。漁業の記録はなく、製塩を行う以外はほぼ農村集落であったのだろう。
 実際島内を歩いても漁村らしき色は感じられない。集落周囲の丘陵地は柑橘類の畑が広大に展開しており、集落内の家々の造りも、母屋のほかに土蔵や納屋を敷地内に配した農家らしいものであった。港にはわずかな数の船があったが、島民の生業は昔から農業あるいは製塩業であり漁業に転向することもほとんどなかったのだろう。
 屋根はほとんどが桟瓦だが渋い黒光りする銀色の瓦で統一され、小高いところから見下ろすとそれらが狭い平地に密集したさまを望め、なかなか壮観である。港付近に家々が固まり、南側は墓地、その辺りから蜜柑畑が斜面を駆け上がるように展開している。
 港から奥に向うと一部には高い石垣の上に築かれた御宅もあった。瀬戸内の島は全般に良質の石に恵まれているので、見事な石垣の風景を見ることが少なくない。
 



 
   石垣の上に建てられている御宅もあった
   

 

訪問日:2021.04.11 TOP 町並INDEX