宿根木の郷愁風景

  新潟県小木町<港町> 地図 <佐渡市>
 町並度 8 非俗化度 3 −西廻り航路の拠点として繁栄した島南西端の集落−

 

宿根木集落を俯瞰する


 佐渡島のほぼ西南端に位置するところに宿根木集落がある。小さな入江の奥に開ける平地ともいえないわずかな平坦部に家々が密集する形をとっている。
 港としての歴史は古く、中世には島随一の渡海場として多くの船舶が立寄った。当時はまだ農業が主体の生活であったが、江戸時代に入ると西廻り航路の中継地となりその繁栄は頂点に達している。北は蝦夷地の松前、そして大坂とを結び、大坂廻米を積む船をはじめ、地場の産物と大坂をはじめとした他国の品々とが往き来し、江戸後期の天保年間頃には15軒の船持ちがあったといわれている。中には千石船と呼ばれた大型の商船もあり、当時の集落の家数が80軒ほどであったことを考えると廻船業の港町として大変な賑わいであった。












鋭角的な平面形状を示す家屋など 狭い平坦地の制約を受けた佇まいだ


 明治以降になると港湾としての機能は小木に譲るようになり、さらに両津港が新潟との航路を発達させたこともあり、宿根木は港町としての機能をほぼ喪失した。以後は古くの農業主体の集落に戻っている。
 集落の独特性、歴史性は特筆すべきものとして重要伝統的建造物群保存地区にも指定されているこの集落、その中央には細い流れがある。この谷間を開析した小川で称光寺川と呼ばれる。現在三面張りとなっている水路は昔から洗濯や洗い物などに利用された生活に根ざした流れであった。現在も大切にされているという。
 家並の特徴は、狭小な平地を何とか最大限に利用して住宅を建造した色が濃く感じられるところである。そのため集落内の街路は非常に狭く乗用車はもちろんのこと人もようやくすれ違えるといった幅の箇所がほとんどであり、迷路のような感触である。また家々の外観も板張りの特徴的な外観をしており、鋭角の辻ではそのまま鋭角の平面形状を呈し、非常に独特のものとなっている。
 一般公開されている旧家の一つに清九郎家がある。廻船業で富を築いた代表的な家とされ、外観からは想像できない吹抜けの空間と大きな神棚などに圧倒される。裏手には自然の岩盤をくり抜いた蔵も残っていた。
 訪ねた時、地区の公民館では地域の伝統芸能である和太鼓の公演が行われ、また外国人の団体客が探訪する姿なども見られ落着いた江戸の風情を偲ぶといった状況ではなかった。しかし保存地区となって20年余りが経過し、手を加えた部分も次第に古い町並風景に同化ており、また訪問客に迎合したような店舗なども皆無であることから、歴史に根ざした重みというものを十分に感じることができた。





訪問日:2017.04.30 TOP 町並INDEX