荻ノ島の郷愁風景

新潟県高柳町<山村集落> 地図 <柏崎市>
 
町並(集落景観)度 6 非俗化度 5
 
−環状集落と呼ばれる独特の展開を見せる茅葺民家群−





荻ノ島集落
 中越地方の山間部にある荻ノ島集落は、茅葺の民家が多く残ることで近年知名度が高まりつつある。
 集落は柏崎に注ぐ鯖石川の上流域にあり、周囲は東頸城丘陵が展開し山襞が折り重なっている。日本海側の山沿いということで冬季の多雪は宿命的であり、克雪という言葉がこの地方にはある。家々にもそれに対応した姿が現れている。
 中門造りと呼ばれるこの集落で良く見られる建て方は、平入りの形を取った建物の正面に突出部を設け、そこを出入り口とするもので、主屋からの落雪により玄関が潰れないようにする苦肉の策といえる。構造的にもこの方が積雪に対して強いのだという。










荻ノ島集落


 この集落は、また家々の配置に独特の工夫が見られる。環状集落と言われるとおり、水田を囲んで家々が円形に並んでいる。農村にとって田は財産であり、何物にも代えがたいものである。それを村落共同で外敵から守ろうとしたとされる。また、集落付近の地盤はなだらかな台地上で僅かに傾斜しており、水田や生活に必要な水資源が各家に均等に配分されるような配置であり、水路も各戸に行渡るよう計画的に建設されている。地形を利用した合理的な集落なのである。
 最盛期の昭和初期には100戸ほどがあったというが、現在は40戸弱と過疎化が進み、山間の農村の現状を見る思いである。しかし多くの家で茅葺の屋根を保っている。実際は屋根の補修の手間を省くため、一時はトタンなどで被われた形になったものも多かったのだろう。それを茅葺に戻したものも多いに違いない。水田を前に山々を背景に、茅葺屋根の家が散在する風景は貴重なもので、失われつつある農村の原型はこんな風景だったのかという思いを抱かせる。ここは余り有名になるべきではない。小さな情報を得た個人探訪者が、カメラを片手に時折訪ねる、その程度の状態で十分である。
 この荻ノ島集落の近くには、同じく趣のある農村風景の広がる門出(かどいで)集落がある。こちらは茅葺の民家はわずかであるが真壁の中門や土蔵などこの地方らしい集落風景が水田の中に展開していた。




門出集落

訪問日:2007.05.05 TOP 町並INDEX