男木島の郷愁風景

香川県高松市<漁村> 地図
町並度 6 非俗化度 5 −典型的な密集型石垣漁村集落の姿−


 

 

 高松市の北、女木島と幅1kmほどの海峡を隔てた北側に男木島がある。団栗の実を逆さにしたような形をした島で、高松港からの船が発着する南西部にわずかな平地があるだけで、ほぼ全島が山地で占められている。
 高松港から日に数便のフェリーが結んでいるものの、乗用車の通れる道は海岸沿いのごく一部以外はほとんどなく、斜面を駆け上がるように展開する集落内に入ることは困難である。そのため一部に単車も見られるが、多くは徒歩で港との間を行き来する形となる。
 江戸時代は幕府領で、大砲台場が設置されており海上警備の拠点でもあった。若干の農家があった程度でほぼ漁業に特化した村で、鯛やイカナゴなどが漁獲され、生計を立てていた。
 高松市に吸収されるまでは雄雌島村といい女木島との二島で構成されていたが、女木島と比較すると高松の市街地から遠いことや、山がちな地形からやや隔絶感を抱かせる。
 平地に立地する家屋は非常に少なく、ほとんどは網の目状に展開する細い路地に沿っている。その範囲は東西300m、南北500mほど。当然東部を中心に坂の上の集落となり、宅盤を造成するために高い石垣が築かれたところが多い。練積になっているのはごく一部で、多くが空積でありその武骨さが美しくもある。
 漁業も決して順調ではなく、島を離れる者も少なくないようで、空家となっている姿も多いのが惜しまれる。しかしこの路地に沿い、斜面を克服した石垣を中心とした集落の風景を見ると、そんな苦労をして宅地を造成する価値があった、そしてそれだけ実際賑わっていたのだろう。
 数箇所に生活用水として使われた井戸がある。現在は水道が敷設されるが、池や川のほとんどない島のこと、集落の立地を見たのはこの井戸があってのことだったろう。
 訪ねたとき、フェリーの客が異常に多くて驚いたが、どうやら男木島で野外アートのイベントが行われていたらしく、外からの客はそれらを巡って歩いていた。私はそれらには眼もくれず、集落そのものの風景を求めて細い坂の路地を上り下りした。
 













訪問日:2015.08.14 TOP 町並INDEX