大原(古町宿)の郷愁風景

岡山県大原町<宿場町> 地図 <美作市>
 町並度 7 非俗化度 6  −山陰とのつながりを深く感じる山間の宿場町−


 大原町は岡山県の北東部、鳥取県・兵庫県の県境に近い山深いところである。近年は智頭鉄道が通り、二刀流で有名な宮本武蔵の生誕地として町は観光に活路を見出しており、活気のある町である。
 佐用から大原、智頭と智頭鉄道の辿る道はそのまま旧街道、因幡街道である。その中でこの大原町古町宿は、この街道筋では最も色濃く当時の家並を残している。
大原の町並 右は古町宿旧本陣有本家








古町宿旧脇本陣涌本家 漆喰の長屋門風の門が特徴で豪華な中庭を有している






 ここは15世紀頃、小さな城下町であった。城は小原城といい、町の名も小原であったというが、後に居城を南方の竹山城に移動させし城下町もそちらに移った。その新城下町に対し小原は古町とも呼ばれた。現在の町名も古町となっている。
 それ以後この古町は因幡と播磨を結ぶ因幡街道の宿場として栄えることとなる。鳥取藩の池田氏などの参勤交代に使われ、本陣、脇本陣が置かれた。それらの遺構は現在でも町中に残り、特に脇本陣の涌本家は、土塀や長屋門をはじめほぼ当時のままで残っている。
 この本陣をはじめ、古町宿の町並は非常に重厚な造りの町家が多い。いわゆる大都市型の古い町並とは違い、間口も広く中庭、前庭を持つ屋敷型の家もよく見られる。そして屋根も山陰より伝播した赤瓦を持つ家もあり、地理的にも文化の交点にあったようだ。代表的な旧家は脇本陣の他、本陣有本家(御成門と御殿、庭園が現存)、一際大きな造りで、なまこ壁、見事な装飾の袖壁(当地では火返しと呼ぶらしい)のある代表的町家、田中酒造などである。それらを引立てるのは、街路の両端の流れである。水量も多く流れも速く町並の中で耳に入ってくる全てはこの水音である。この流れを中庭に取入れたりしている光景にも出会う。
 町並には凛とした空気が漂い、いかにも山間の宿場らしい。岡山県の町並保存地区に指定されており、ある程度修景されているようだが、団体客の訪れもなく落着いた町並散策が味わえる。観光客に媚びた土産物屋などは必要ないが、でき得るならば本陣、脇本陣の一般公開、町並を学べる場が一つでもあればと思われた。その価値の十分ある町並である。


訪問日:2002.11.03
2014.08.13再取材
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