岡田の郷愁風景

愛知県知多市<産業町> 地図
町並度 6 非俗化度 6 −知多半島の内陸部にある木綿商人の町−






岡田の町並 大通りには連続した町並が残り 一方で裏通りは変化に富んだ家並景観が展開する


 知多半島北部の内陸部にある岡田の町は知多木綿のふるさとといわれる。木綿産業の興りは江戸初期と古く、当初は農間余業として木綿を織っていた程度であった。その後江戸の木綿買継問屋株を取得する者が現れ、全国に販路を広げていった。
 明治に入ると近代的な動力織機を導入し本格的な生産体制を確立した。織機の開発も盛んに行われ、豊田佐吉氏も時折視察に訪れていたほどであったという。大正期には岡田町内に30余もの織物工場があり、4000人を超える人口を擁し、町は女工の姿が目立ったという。知多木綿というとその中心地は岡田で、最盛期には7割を超えるシェアがあった。
 町並にもその繁栄の残照が濃厚に感じられる。内陸部とはいいながら知多半島は緩やかに起伏する丘陵地が主で、その丘と平地が交錯する地形に従って家並が続いている。街路が曲るとそれに従い石垣もその上の家屋も円形に曲って建つ。木綿商で財力を積上げた立派な邸宅も残り、また洋風の建物もあるなど近代になってから栄えたのがよくわかる。
 バスなども通る二車線の道路から一本南側に旧道が走り、特にそれが典型的に見られる。これは良い散策路であった。先に書いた街路の曲線も視線の遮断が適度に図られ、これから現れる町並への期待を抱かせる。伝統的な構えの家々も様々な形式があり、それらが自然体の形で息づいていることで強い歴史性を感じ取ることが出来る。
 所々に案内板が見られ、それが控えめなのが好ましい。予備知識無しで訪問しても、この町の歴史が一通り学べるように工夫されている。
 知多半島を代表する町並の一つとして、生活感を保ちながら長らく息づいてほしいものである。




街路の曲線なりに建つ家屋 洋風建築も見られる(現役の郵便局)







訪問日:2010.01.02 TOP 町並INDEX