小見川の郷愁風景

千葉県小見川町【商業町】 地図 <香取市>
 
町並度 3 非俗化度 8  −利根川水運の拠点 醤油の町−






黒部川沿いの町並
 利根川の下流域、銚子に近い位置に小見川の町はある。中世には小見川城が築かれ、その後永禄年間(16世紀半ば頃)に正木氏がここに陣屋を構え、後に小見川藩が成立している。現在の町には城下町・陣屋町としての姿は残らず、小学校の敷地に陣屋跡を示す石碑が建てられているだけである。
 江戸時代中期以降、舟運の拠点として町場化し賑わいを見せた。利根川水運によるもので、付近の年貢米を江戸に運ぶために開発されたものだったが、小見川は年貢の積出港を端緒として、近隣の物資が集結し貿易港・商港として発達していった。この過程は近くの佐原と全く同一である。そして利根川に流れ込む支流の黒部川に河岸が設けられ、荷の揚げ下ろしが行われていたことも共通している。江戸への物資は、利根川を遡って現在の千葉県北西端にある関宿を経由し、そこで江戸川に移って下り、一旦江戸湾に出て隅田川に入るという経路をとっていて、実際大変な遠回りをしていた。しかし大量の物資となると水運に勝る手段はなく、専らこの舟運に頼っていたという。また、銚子方面に向う旅人もこの航路をしばしば利用したため、この黒部川の河岸でも商取引が盛んに行われていた。
 この町の古い産業に醤油醸造業がある。大豆の栽培が盛んだったのと、利根川の豊富な水があったからだろう。「ちば醤油」は嘉永7(1854)年創業で、現在でも町の代表的な産業となっている。
 
 


左側の商家の土蔵は国登録有形文化財


ちば醤油の店舗





黒部川の一本西側の町並 駅前付近の町並 寄棟の建物が多い
 

 黒部川沿いに「ちば醤油」の醤油蔵が残されているという情報を得て訪ねたのだが、どうやら土蔵は取壊されたらしく、少し離れたところに歴史的な造りではあるが、小ぢんまりとした店舗があるだけであった。川沿いの風景はほとんどが近代的な建物に取って代わり、河岸の昔を思わせるものは少ない。しかし所々に出桁の伝統的な町家建築が残っており、辛うじて町の歴史を感じさせてくれる。重厚な店蔵や土蔵も僅かながら見られる。

 この町で特徴的なのは屋根が寄棟形式(入母屋造りの妻部が連続したような外観)となっている建物が多いことで、古い民家は約半数が寄棟であった。近辺の町でも見られ、この地方独特の建て方なのだろうが、他の地方では寺などの建築に見られる程度で、通常の民家に採用されることは少ないだけに異質な印象だった。
 
訪問日:2006.11.04 TOP 町並INDEX