金屋の郷愁風景

青森県尾上町【農村集落】 地図 <平川市>
 町並度 6 非俗化度 8
  −林檎農家が競って建てた土蔵の町並−
















 金屋地区は尾上の市街地から南東へ2kmほど、むしろ東北自動車道の黒石インターから国道を少し西に向かい、県道135号を3kmほど南下した付近という方がわかりやすいかもしれない。県道も幹線道路ではないためふと通りかかるような事もないようなところである。津軽平野の東端にあって徐々に山裾が迫るところにある。
 江戸時代までは零細な農村に過ぎないところで、明治12年の「共武政表」によると人口500人余り、記録されている農産物は米、西瓜、茄子など。他に馬66とある。
 明治後半になると一帯で林檎の栽培が本格的になり、周囲の丘陵地を含め果樹園を造成、機械化を進めて津軽一帯でも有数の林檎栽培地となった。大正15年に金屋林檎出荷組合を結成、周囲の道路も整備され各地に移出されていった。
 歴史的にはこの地方らしい林檎栽培の盛んな集落といったことに過ぎないが、町並景観は独特のものを保持している。
 この地区の林檎農家は各家ごとに土蔵を建て、果樹の貯蔵に使っていたという。その数80棟にも及び、そのうち約40棟が登録有形文化財に指定されるなど歴史的価値のある土蔵群といえる。これらの多くは林檎栽培が盛んになった明治から昭和初期にかけての建造というが、一部には江戸時代に遡るものもあるという。漆喰窓まわりなどに鏝絵などで装飾的な意匠を施したものも多く、林檎農家として裕福だったであろうことがわかる。
 商家の母屋を燃えにくい蔵造りとした、いわゆる店蔵などは例外として、土蔵は一般に表通りから控えた裏手に建てられることが一般的だ。土蔵並ともいえるこの町並風景は他ではなかなか見ることの出来ないものといえよう。
 蔵並を巡るツアーや、ライトアップなどのイベントも行われているようで、地元ではこの土蔵群を認識されているようだ。有識者にも注目されているようで、その貴重さから重要伝統的建造物群保存地区にも匹敵するものがあるのではと感じる。



訪問日:2016.12.31 TOP 町並INDEX