百島の郷愁風景

広島県尾道市【農村集落】 地図
 町並度 4 非俗化度 7
 −芸予諸島最北部に位置する農業の島−




福田港の背後には農村集落らしい佇まいが展開している
 

 百島は尾道市に属し、北は沼隈半島から西へ張り出した小半島、南は内海町の横島などに囲まれた内海に位置している。位置的には芸予諸島と呼ばれる一連の島々の中で最も北側の島である。向島方面や沼隈半島常石港からの船便が発着し、比較的平坦な北半分に集落や農地が展開している。もともとは五十島として二つの島であったものが、海流の影響で一つにつながり百島と呼ばれるようになったという説がある。
 藩政期は一時幕府領の時期もあったが多くは福山藩領で、農業が主体の島で南東の泊地区は漁村集落的な性格もあった。現在は尾道や常石の造船所に通う通勤者が多い。以前は山肌を整備して蜜柑などの果樹栽培が盛んに行われていたが、その後は杉や檜などが植樹されている。島の北東部には比較的平地が展開しており、玉ねぎや大根、キャベツ等が栽培されているものの、産業というほどではないようだ。
 昭和25年の統計では2,900名近くの人口を有していたが、その後減少を続け2022年時点では400名ほどという。客船の発着する福田港の周囲に比較的まとまった家並があり、内陸に入りやや小高いところにも集落が展開していた。この集落には入母屋根を持つ家や、土蔵など豊かな農家を思わせる家々が見られ、古い町並的な風情を感じる。
 かつての賑わいを象徴する建物が集落から平地に降りた付近にある。「百島東映」の文字が残るもと映画館の建物で、昭和36年に建てられ長らく使われていなかったものを、最近再整備・公開したという。訪ねた時は再びツタなどの植生に覆われてその様子は見られなかったが、島では他にももと村役場の建物を宿屋や情報発信基地などとして活用したりする取組が行われているようだ。
 古い町並や集落としての見所が多くある訳ではないが、本土からすぐの所なのに島独特ののんびりとした時間が流れているように感じられる。
 








福田港西側の集落
 

 
元映画館の建物

訪問日:2023.09.09 TOP 町並INDEX