大坂・柿原の郷愁風景

鳥取県溝口町・江府町<農村集落> 地図(大坂) 地図(柿原)<伯耆町・江府町>
 
町並度 5 非俗化度 10 −大山麓 清冽な水の流れる農村集落−

 

 



 


 
大坂集落


 大山の南西麓、日野川の支流白水川の谷沿いに位置する大坂地区。国道181号から次第に急坂となる道をしばらく辿ると、視界が開けて比較的平坦な土地が右岸側に開け、家並が見えて来る。
 赤瓦・黒瓦混在でやや赤の比率が高い農村集落は、大山への登山道沿いにもあたっていた。そのためか構えのどっしりとした旧家も目に付き、煙抜きの越屋根を持つ立上りの高い建物も見られた。 『伯耆誌』によると37軒・208人とあり現在より賑やかな集落だったようだが、現在歩いても寂れた様子は余り感じられない。
水の確保には苦労したようで、江戸中期の元文年間頃に集落外から1.5kmほどの樋を引いて灌漑用水としたという。現在家並の間に音を立てて豊かな水の流れがあり、清涼感があるが、先人の苦労あってのことである。
 柿原地区は大坂地区から南に尾根一つ越えた位置にある。この集落は、通行止めとなっていた道の迂回路を通過中に偶然目にしたもので、谷間に固まる黒瓦中心の家並が印象的だった。江戸前期には地名の見える農村集落で、地名は柿の産地であることから名づけられたと言われているが、主な産物は桃で、また薬用人参も周辺各村とともに栽培されていた。天保4(1833)年に根雨(日野町)の豪商近藤家と鉄穴議定書を交わしていることから、砂鉄採取、製鉄にも携わっていたか。
 集落内に入ると、車がようやく通れるほどの道幅が曲折しながら巡り、土蔵に沿ってまた路地が派生したりして探訪感がある。土壁のままの家屋が多いのが個々の建物に関する感想だったが、それよりもやはり坂の上から俯瞰する風景の美しさを挙げたい。

 
 



 
柿原集落の遠望    


 


 
柿原集落 


 
大坂集落に巡る水路

訪問日:2025.07.05 TOP 町並INDEX