的山の郷愁風景

長崎県大島村【漁村】 地図
 町並度 6 非俗化度 8 −的山大島の玄関−
 




 平戸島の北約10kmに浮ぶ的山大島は、旅客船の発着する港が二つある。集落としては東部の神浦がやや大きいが、船便は西部の的山港を中心としたダイヤが組まれている。
 南側は島々に囲まれた穏やかな海域ともなっていることから、古くは遣明船の途中寄港地、風波を避ける港としても多く使われた。江戸時代には捕鯨が盛んに行われたこの島では、最盛期には相当な人口の増加があったようで、鯨組1組の従事者は600人ともいわれた。捕鯨は藩の財政にも大きく寄与していたこともあり、大島の集落は豊かな漁村であった。
 神浦地区が近年重要伝統的建造物群保存地区となり、一部では解体修理や修繕も行われ、メディアでも紹介されるようになってきた。一方でこの的山集落が話題に上ることはないものの、集落の展開は基本的に全く一緒である。
 港に沿い家並が二列連なり、その間に小路が伸びている。これが古くからの集落の主要道、生活道だったのだろう。海岸沿いの道は自動車交通に対応して建設されたものと思われる。そしてその小路に面して家々は玄関を構える。持送りなどの装飾的意匠が多く見られるのは、捕鯨を筆頭として豊富な漁獲に恵まれた証のようである。一部には二階部に木製の欄干が残る家もあった。明治から大正にかけて、漁場を求めてやって来た他地方の漁船を迎え入れ、宿屋や料亭も多く存在していたというから、あるいはその名残なのかもしれない。
 家々は密集性が高く保たれており、新しい家屋が少ないことから古い町並としても十分評価できる。神浦集落に比べるとその規模は小さいものの、質的には匹敵するものがある。
 


密集集落が展開する的山の町並




 





訪問日:2010.08.15 TOP 町並INDEX