大塚の郷愁風景

東京都文京区<都市部の非戦災地区> 地図 
 
町並度 3 非俗化度 7 −幹線道路から階段を下りて展開する昭和の町並−



 大塚は西に池袋を控え、丘陵地と谷底が複雑に絡み合う地形のもとにある。武蔵野台地の東端とその溺れ谷の連続という地形は現在の地図では全て市街地となっているためわかりにくいが、歩いてみるとそれがよく実感できる。
大塚五丁目の町並









 

 地下鉄丸の内線の新大塚駅を降りると台地上の細い尾根上に出る。国道254号線(春日通り)は尾根に沿っており、左右に向って標高が下がる地形となっている。特に南側は急激に落ち込み、車道はともかく歩道はほとんどが階段で谷底とをつないでいる。近代的なマンション建築や商店が連なる幹線国道沿いとは一線を画する町並風景がこの谷間に展開していた。
 この区域は東京市の時代は旧小石川区大塚坂下町とよばれ、古くは幕府の薬草園があったといわれる土地である。その後も谷底にあるということもあって抜本的な開発がされることなく現在に至っており、第二次大戦時の焼失も免れたことから貴重な下町的風景が残存している街区である。
 下町風景として知られる他の町々と比べて知名度も低く、実際伝統的な家屋も数えるほどしか残っていなかった。しかし近代的な春日通りから階段路地を降りてのこの町並展開は異次元空間にでも踏み入れたような感触を抱く。
 やがてはその色も淡くなるだろうが、記録として留めておきたいところだ。


 
訪問日:2013.07.14 TOP 町並INDEX