須賀利の郷愁風景

三重県尾鷲市【漁村】 地図
 町並度 6 非俗化度 8 −半島の先端部にある漁村集落−
 須賀利浦は南北朝期からその記録の残る村で、当時から漁業以外を生業とする者のほとんどない生粋の漁村として息づいてきた。
 尾鷲の市街地から北東方向、陸路で行く場合は一旦市域外に出て、大層な大回りを余儀なくされる。集落の人々のための巡航船が尾鷲港とを結んでいる。
 江戸時代に入ると、漁村に加えて諸国の廻船が風待ちのために停泊するところともなり、船宿もあり賑わいをしめしたという。一例を挙げると文化3(1806)年の入港廻船186隻との記録がある。また外海に接する海域のため難破船の入港も多かったという。面白い記録として、江戸後期の文政年間に作成された「全国湊比べ」という一種のランキングで須賀利浦は西前頭17枚目に記載されている。
 
 








 沈降海岸の続く付近の海岸線は平地に乏しく、ここも例外ではなく住宅地が展開する地形としては過酷だ。海岸線の一本道とその内側の生活道以外はほとんどが車の通行を拒む細い坂道や階段だ。或る所では階段を降りると漁家の裏庭であり、また他の場所では路地がいつの間にか縁側に接する敷地になっている。どこまでが道路か個人宅の敷地か判然としない。斜面に展開する家々は簡素な民家が多くを占めていたが、海岸に近い平地に建つ家屋は間口が広く、二階部に木製欄干を持つものもある。それらはもと船宿だったのかもしれない。
 集落の高みから見下ろすと屋根が折り重なるように連なり、海岸付近から見上げると密度の高い家並が斜面に林立しているのがわかる。そして集落前の海は入江の奥のこと、鏡のような穏やかな海面を見せている。ここに各地の廻船が集うて来たことは自然なことだろう。







訪問日:2010.10.10 TOP 町並INDEX